慢三の《尾气》を読み終えました。
北京という大都市で奮闘する人たちの悲哀に満ちたミステリーです。
10月末のある夕方、通勤ラッシュのピーク時に、北京の環状線・三环路の国贸桥上で、車を運転していた男が突然死。
現場に駆けつけた刑事・马牛は、フロントガラスに自分の名前が書かれているのを見つけます。死の直前に男が指で書いたダイイングメッセージと思われますが、马牛は男の顔に見覚えがありません。
遺体や車内の様子に不審な点はなく、検分の結果、事件性はないものと処理されましたが、どうしても引っかかる马牛は上司に直談判し、時間制限をつけられた中で捜査を始めます。
果たして、男は殺されたのか。なぜ马牛の名を残したのか。
三环路の国贸桥
男が死んだ三环路の国贸桥という場所が、物語のキーのひとつになっています。
地図を見ながら、登場人物の動きを考えるのも楽しかったです。
北漂の悲哀
「北漂」と称される、地方から北京に出てきて成功を夢見て奮闘するひとたち。彼らの悲哀が丁寧に描かれています。都市戸籍を持たず北京に暮らす人々には、マンションや車を買うのにも、子供の教育の面でも、圧倒的に不利な条件が課せられます。
主人公の马牛は北京人で、親の家に同居しているのですが、彼の呑気さと死んだ男・黄天の切実さが対照的です。生まれた場所が違うだけで、こんなにも大きな格差が歴然と存在している。
北漂を描いた作品といえば、《北京浮生记》も印象深いし、《北京不孤单》もよかった。
謎解き
何度か大きな転換点があって、そのたびに驚きがあり、飽きずに読めます。
推理小説を読むと、どうしても「そんな何回も偶然が重なるわけないですよね」と白けてしまう私ですが、今回もそのような感想を持ちました。でも東野圭吾を読んでもそう思う私なので、この作品が悪いわけではないです。
謎解き部分は、ちょっと無理があるかなあとも感じましたが、読んでてイヤになるほどではないです。それよりも、登場人物がきちんと描かれているのがとてもよかった。北京での暮らしをリアルに感じられる文章でした。
これまで読んだ中国のミステリーは飽きて途中から読み飛ばしてしまうものも多かったので、その意味では、この作品は最後までおもしろく読めました。
褒めてるのかけなしてるのかわからなくなってきましたが、とにかくおもしろかったです。美女がたくさん出てきましたが、ムダなイチャイチャもなくてよかったです。