《文城》余華 読み終えました(中国語読書)



8年ぶりの余華の新作長編《文城》、読み終わりました。
読み始めたら止まらず、一気に読み終え、寝不足です。

余華 文城

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電子書籍はAmazon中国または京東、当当など複数のストアから入手可能です。

8年ぶりの新作

2013年の《第七天》ぶりの長編小説です。なんと8年ぶり。

余華の7年ぶりの長編小説が出たと聞いて、気になってはいたのですが、『兄弟』のようにヘビーだと日常生活に支障が出るなあ…と悩んでおりました。...

予備知識全くなしに読み始めましたが一気に引き込まれました!
初版50万部、予約販売開始後二日目で10万部増刷だそうです。すごいな!

あらすじ

物語は溪镇に住む林祥福という男についての描写からはじまります。
家具作りで一財を成している林祥福ですが、ひとびとは彼が17年前の歴史的な寒波のさなかに、小さな女の赤ちゃんを抱いてこの街にやってきたのを覚えています。

時代は清朝末期から民国時期のあいだ、あちこちで争乱が起こり、民衆が匪賊の害に苦しんでいたころです。

先日高校生の子どもと夢中になって観たドラマ、『月に咲く花の如く』と同じくらいの時期の話なので、わりと背景がわかりやすかったです。都市部に電灯が普及したり、匪賊に金持ちの子が誘拐されたり、女の子の通える学校ができたり、民衆のあいだにまでアヘンが広まっていたり…と、共通のモチーフも出てきて、理解の助けにもなりました。(レビューに「余華は最近の民国ドラマを見すぎじゃないのか」というのがあって、思わず笑ってしまったんですが、それだけ小説がおもしろくハマってしまうということでしょう。)

このドラマ、長いけどおもしろかったのでおすすめです!


月に咲く花の如く(全74話)

林祥福がなぜ溪镇にやってきて、男手一つで娘を育てたのか、というところがメインテーマになっています。

周りの人の善意と、若いころ身につけた技術に助けられながら真面目に生きる林祥福。《活着》と同じく、人々の情の厚さと運命の残酷さに涙がこぼれ、ティッシュの消費が止まりません。

とはいえ、読み進めるうちに、ふと過去の作品のことを思い出し、(あれ…これは余華の作品…今回はお下品エピソードは封印かな…)と、ちょっとものたりないような気持ちになったのですが、ご安心ください。25%あたりで、あ、やっぱり余華の小説だわ、と実感できます。

ここからネタバレあり(タップで開く)

後半「补」

作品の目次を見ると、「文城」(75章)と、「文城・补」(36章)に分かれています。

前半は林祥福の物語、後半は小美の物語です。
てっきり後半は娘である林百家の話が続くと思っていたので、ちょっと意外でした。

阿强も彼の両親も、小美のいうように、あの時代のひとにしてはすごく優しい部類に入るんでしょうけど、阿强の影は最後まで薄いままでした。でも小美が阿强と離れがたいのはすごく共感できた。

それにしても、林祥福がふたりを見つけられなかったのが謎です。小さい町だし田舎の人は口さがないし、すぐにわかりそうなものなのに。それも、見つかるように置いておいた金の延べ棒のエピソードみたいに、天の計らいだったということかしら。

「补」を読まず、前半だけでもきちんと完結しているし、补篇を読んだら前半と呼応している部分が多くあって、また深まります。最初は、(なんで「补篇」が必要?)と思ったけど、読み手は前半で一度区切りをつけたからこそ、後半を読んで響くものがある。よくできた構成だなと感じました。

男性の主人公と、女性の主人公で、グルっと視点が一転するのもおもしろかったです。
余華は赤ちゃんの描写が上手だなあと思いました。ときどき、自分の腕に赤子を抱いているみたいな気持ちになりました。(そういえば小美は母乳出なかったのかな? あの時期は、赤子のことを考えただけで胸が張って、お乳がピューピューこぼれて困ったものですが。)

みんなが主人公

余華の作品のすごいところは、主人公だけでなくたくさんの脇役に感情移入しちゃって、あの人どうなったんだろう、と読み終えた後もずっと物語が続いていくところです。

林百家はもちろんだけど(誘拐された時の肝の座り方が半端じゃなくってかっこよくって、絶対彼女の話の続きが読めると思っていたのに! 続きが読みたい!)、陈永良夫婦や陈耀武、顾益民、その娘たち、オーストラリアに売られていった哀れな放蕩息子、和尚とそのお母さん、翠萍、自警団の親分、その他ちょっとしか出ていない脇役(売られたロバも!)のことも深く印象に残っています。

これまでの長編の中で、なんといっても《兄弟》がいちばんエネルギッシュです。
ギュイィィーンと上昇していくおもしろさと同時に、不幸の程度も底抜けで、読むだけで疲労困憊してしまうため、一度原書を読み、それから泉京鹿さんの日本語訳を一度読んで以来、読み返せてないと思います。

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《活着》もとてもよかったけど、これでもかこれでもかとばかりに続いていく悲しいエピソードに打ちのめされてしまった記憶があります。ユーモアもたっぷりだったと思うけど、そっちより不運と不幸に読む側の私がへこたれてしまった。

そういった過去の作品に比べると、悲しいエピソードももちろんたくさんあるんだけど、《活着》や《兄弟》のように痛々しくて直視できないレベルの徹底的な不幸の描写は減っているような気がしました。死神が多少手加減してくれているのかもと思うところが多々あり、読んでてあまり消耗せずにすんでよかった。

そう感じるのは、読んでいる私が年をとったせいか、著者も同じだけ年を取ったせいか。
 

“这都是缘分,都是命” という言葉が胸に響きます。

装丁に使われているイラストは、ジャン・シャオガン(張暁剛)の《失忆与记忆:男人》。著者本人の希望によるものとのこと。

余華 文城

Poke3を買ってから読書量が目に見えて増えました。

買ってよかった。まだまだ読みます。

余華 文城

6インチの電子ペーパーブックリーダー、BOOX Poke3を買いました。 ちっちゃいよ! Android10で動くので、...

ひさしぶりに《活着》も読み返してみたくなりました。しんどそうだけど。

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よく見ると、日本語版の2冊も装丁が张晓刚ですね。

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