ずっと読みたかった《佛兰德镜子》(フランドルの鏡)をやっと読み終わりました!
紙の本がほしかったのですが、電子書籍が入手できるようになっていたので、電子書籍で読みました。
初期フランドル派の画家、フーゴー・ファン・デル・グースの絵をめぐる歴史小説です。
中国人により中国語で書かれた作品ですが、中国とはまったく関係ない西洋史がテーマ。
中国語で書かれた名前や地名を調べるのが大変でした。
読んでいて、佐藤賢一とか塩野七生とかの作品を連想しました。一時期たくさん読んだなあ。
著者のdome(胡葳)は1984年生まれ、パリのソルボンヌ大学で比較文学を学びました。
フランドルの鏡
フランドル絵画といえばヤン・ファン・エイクの『アルノルフィーニ夫妻像』の凸面鏡が有名ですね。
これは徳島の大塚美術館に行ったとき、レプリカを撮ったもの。
フーゴー・ファン・デル・グースは、このヤン・ファン・エイクに劣等感を抱き続け、心を病み、ブリュッセル近郊のローデンダーレ修道院に隠遁し、最後には自殺してしまいます。
冒頭の、ヤン・ファン・リュースブルクの『永遠なる至福の鏡』から引かれた文章も、フランドルの鏡というタイトルにこめられたもうひとつのテーマです。
在神秘的境界里,眼睛挨着眼睛,镜子对着镜子,形象贴着形象……
この文章が示すように、小説自体も向かい合わせた鏡のように何層にも入れ子になっています。
最初は理解するのが大変でしたが、だんだんと読み解くのが楽しくなっていきました。
あらすじ
ナチスがベルギーを侵攻した1940年、その年の8月31日の、リエージュ発オーストエンデ行の夜行列車。
一幅の中世絵画を携えた乗客とひとりの歴史学者が乗り合わせ、夜を徹して、歴史から消えた絵画にまつわる物語を語りつくします。
スペイン人のコンキスタドール、ディエゴ・デ・アルマグロ、「赤」と名付けられたローデンダーレ修道院、ソワーニュの森、ケルンの聖遺物「休まる場所のない心」、『クレド』の時代の愛情、夢と現実のはざまに生きるフランドル画家のフーゴー…。
各章が入れ子になり、語り手と聞き手が向かい合う鏡のように互いを映しあい、夢と現実、過去と現在、光と影が絡み合い進んでいく、幻想的な物語です。
感想
いっぱいメモを取りながら読みました!
歴史上、実在する人物やモノ、事件もあれば、フィクションぽいものもあり、その境界があいまいなところがモヤモヤしますが、その謎解きも含めて楽しかった。
英語ウィキペディアだけでは足りず、ドイツ語やスペイン語などのページを翻訳機能を使って読み込み、調べまくりました。
381年のコンスタンティノポリス公会議から、ペストの流行が起きた14世紀、新大陸発見の15世紀、そしてナチスの台頭する20世紀…。すごい時間旅行をさせてもらいました。
美術鑑賞においても、こうした歴史小説を読むときにも、高校時代の世界史の勉強がうっすら役立ってうれしい…。
読み手を選ぶタイプの小説ですが、好きな人はのめりこんでしまうと思います。
もう一回じっくり読んで、ネタバレ感想を追記する予定です。
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