南货店 张忌 読み終えました(中国語読書)



张忌の2020年の長編小説、《南货店》を読み終えました。

最近の中国語読書は、好きな短編を何度も読み返すか、中国語に訳された海外作品を読むかがほとんどで、長編小説を読み切ることが少なくなっていました。

久しぶりに、読み終えて「これは人に紹介したい!」と思える作品でした。


(微信読書にリンクしています)

著者について

著者の张忌は1979年浙江宁波生まれ。
2014年に第二届人民文学新人奖を受賞しています。

これまでに長編小説《出家》《公羊》、短編集《搭子》を発表しています。

《出家》はこのあいだ天天さんが読んだ感想をブログにアップされてました。

あらすじ

著者の生まれ育った中国江南地方を舞台に、まじめで穏やかな性格の陆秋林が社会人として働き始めた1970年代後半から、90年代はじめまでの半生が描かれます。

第1部

物語のスタートは、ちょうど文革が終わったころ。
第1部は、主人公の陆秋林が「南货店」という、小さな村の雑貨店に店員として配属されてから離れるまでの物語です。

同級生たちは街中の百貨店や工場に配属が決まるなか、父親が文革中の行為を有罪とみなされ投獄されてしまった影響もあり、秋林は実家から離れた田舎のよろずやに行かされてしまうのですが、不遇にめげず、与えられた場所で健気にがんばります。

「南货店」で一緒に働く年の離れた马师傅・吴师傅・齐师傅の3人や、店に出入りするひとたち、親元を離れて頑張る秋林を支えてくれる豆腐屋のおじさん。学生時代の親友・卫国に、初恋の相手の女の子、春华。秋林と淡い恋が芽生える杜英。

たくさん登場人物が増えていくのですが、皆とても個性的で、混乱せずに読み進めていけます。

物語は秋林を中心に進んでいきますが、各脇役にスポットライトが当てられ、丁寧に語られていくことで、イラっとする言動ばかりする人も別の角度から見ればいい人だったり、秋林にとてもよくしてくれる人であってもほかの人からするとひどい人間だったりする。登場人物それぞれが、いろいろなものを背負いつつ暮らしているのだとわかります。

「ああ~、もう、よけいなことすんなよ~」とか、
「早く、早く行っとけ!あーイライラするー!」とか、
「そんなわかりやすいウソにだまされるんじゃないよ~」とか、
かなりどっぷりハマって、登場人物たちにツッコミを入れたり応援したりしつつ読みました。

出てくる人たちもいいのですが、出てくる食べ物の描写もよいのです。
身体にしみこむおいしさ・あたたかさが伝わってきて、しょっちゅうおなかが鳴りました。

とにかくこの第1部が大変よかった。

第2部

第2部では秋林は「南货店」を離れ、「黄埠供销社」で文書係として働き始めます。
村から少し大きな町へうつり、田舎の商店の番頭見習いから、会社の事務職になったという感じで、順調に出世していってます。

秋林の実直な性格を、周囲の人間が認めて引きあげてくれるのが、自分事のようにうれしく読み進めていくのですが、第2部の中盤以降は、官场小说というのか、権力と駆け引き的な話が中心になっていきます。女性の地位も低く、ひどい扱われ方をされるのも読んでいてきつい。文革をテーマにした小説もキツいですが、正直この80年代の雰囲気も結構しんどいです。いい人も悪い人もその人間性に関係なく運命に翻弄されるのは、余华の《兄弟》みたいだなと思って読んでいきました。

第3部

第3部では、秋林はふたたびコネで抜擢され、今度は本社(的なところ)の秘書課の課長に任命されます。

ここからストーリーはさらに官场小说みを増していきます。私はこういう話があんまり好きじゃないので、適当に読み飛ばしていったのですが、このドロドロな部分が終盤にぐっと効いてきたところで、著者の力量を感じました。このドロドロがあってこその物語なのでしょう。

タイプは違うのですが、どうしようもない人間の美しさとか輝きみたいなものを見せてくれるところに、沼田まほかるの『彼女がその名を知らない鳥たち』を連想しました。

親世代は文革という大きな歴史の渦に翻弄され、ようやく終息したかと思えば、今度は子供世代は社会主義市場経済という荒波の中を進んでいかないといけない。どの国に、どの時代に生まれても、それぞれ困難を抱えて生きていかねばならないのでしょうが、人生ってままならないものだなあ、としみじみ感じ入る物語でした。

とはいえ、そこここで声を出して笑ってしまうところもあったりと、争いや悲劇ばかりでなく、楽しい場面もたくさんあり、読んでよかった!と満足できる本です。第1部だけ何度も読み返したい。

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