「イラクサ」アリス・マンローを読んでいます



最近はやりたいことが多すぎて、読書量がめっきり減っておりますが、いい本が手元にやってきたので、じっくりのんびり楽しんでいます。

旅仕事の父に伴われてやってきた少年と、ある町の少女との特別な絆。30年後に再会した二人が背負う、人生の苦さと思い出の甘やかさ(「イラクサ」)。孤独な未婚の家政婦が少女たちの偽のラブレターにひっかかるが、それが思わぬ顛末となる「恋占い」。そのほか、足かせとなる出自と縁を切ろうともがく少女、たった一度の息をのむような不倫の体験を宝のように抱えて生きる女性など、さまざまな人生を、長い年月を見通す卓抜したまなざしで捉えた九つの物語。長篇小説のようなずっしりした読後感を残す大人のための短篇集。

新潮クレストシリーズとハヤカワepiシリーズにはただただ感謝。

言語の違いという垣根を取り払い、彼らは私に異国のスープを一杯、差し出してくれる。
スープは熱く、滋養に富み、計り知れなく深い。
手の中にすっぽりと収まるその一杯を飲み干す、その幸せ。

美味なばかりではなく、時折その熱さや苦さは舌を焼き心に鋭い痛みを与える。
海を越えた一人の作家の胸のうちに広がる、その広大な世界は、ことばとことばをつなぐひとたちがいなければ、決して味わうことができなかった。その奇跡、その僥倖。

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コメント

  1. Shira より:

    雑誌 TIME や The Economist で名前を何度が見かけました。
    日本ではなぜか紹介が遅れてますね。
    もっとも私も読んでいないんですけど...。

  2. Marie より:

    >Shiraさん
    そうなんですね。私はこの本で初めて著者を知りました。
    素敵な本に出会うとつい興奮してしまいます。