セルフ・コンパッション クリスティン・ネフ を読み込んで起きたこと



この春、今まで味わったことのない感覚が私のもとにやってきました。

ミッドライフクライシスのような、バーンアウトのような。

仕事も家庭のいろいろも、やりたいことをやり切りました、という満足感と同時に、ここからどうしたらいいのかしら、と、途方に暮れるような気持ちが一度にやってきて、その当惑から逃げるような形でゲームや物語に没頭する時間が増えていきました。

それと並行して、職場では、今まで会ったことのないタイプの人と業務を協力してやることになりましたがぶつかることが多く、自責と他責が行ったり来たり、頭の中が忙しくてそれだけで疲れる、というような状況も生まれました。

辞めてしまおうか、あるいは、上層部に相談して顔を合わさなくてすむようにしてもらおうか…、策略みたいなものが頭の中をぐるぐるめぐり、4月は特に、苦しい気持ちをずっと抱えていました。

転換点と、次に向かうべき方向

自分の気の持ちようが変わるきっかけになったのは、子どものインターハイ予選試合の応援でした。

コロナでずっと応援に行けなかったのですが、おそらくこれが引退試合となるであろう地方予選、最後の観戦です。

若い選手たちの天真爛漫さがびっくりするくらい胸に響きました。

自分も学生時代に団体競技をやっていて、感動エピソードと同じくらい、内部のどろどろした話もあるのが経験者としてわかっているけれど、それでも、予選を勝ち抜ける可能性はほぼゼロだけど最後までリーグ戦を力いっぱい、楽しく闘い続ける姿を見て、すばらしいな!!!と感じました。

この先の人生への不安にからめとられていた自分を彼らが励ましてくれた、と思えました。
すべてにおいてよりよくなることを勝利であり目標とするなら、人生はすべて負け戦です。でもそうじゃない。

そのあたりから腰を据えて、自分を大切にする、自分をいたわる方法について考え始めました。

セルフ・コンパッション

これまでずっと、自分のお尻に鞭打って、早く走ること・目標に到達することばかり考えていた気がします。
頑張ることは全然苦になりませんでした。他人との競争というより自分への挑戦という側面にフォーカスしていたのもメンタルヘルスによい影響を与えていました。

でも、思ったよりひどくよれよれになってる自分に気が付きました。

気持ちをぐーーーっと高めたり、怒りみたいなものを動力にしてみたり、ずっと自分の気持ちにドーピングし続けながら前進してきたのだと思います。

前進すること、成長することが正しいし、自分の目標である、と信じて、そうやって進み続けることが、幼い頃いろんなことがうまくいかなかった自分を慰める、癒す方法だと思っていました。

でも、人生折り返しの時期にきて、とうとうその方法だとうまくいかなくなった。
何かを変えなければならない段階に来たみたいです。

参考書籍を探し、目についた本を片っ端から読んでいたら、「セルフ・コンパッション」という概念(Wikipedia)にたどり着きました。

中でも気に入ったのはこの本。

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私は英語で読みました。

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自分をいつくしむ方法

バレットジャーナルについて書いたピンクの本の中でも紹介した「コーピング・リスト」。

少し前に、NHKスペシャルの「キラーストレス」シリーズをご覧になった方も多いと思います。 ストレスは心の健康だけでなく、身体の健康にも大き...

これもきちんと使えば自分をいたわるメソッドなんだと思うのですが、私の場合は、「ストレスを受けてパフォーマンスが落ちている私は本当の私ではない、元の自分に戻さなければ」みたいな気持ちで取り組んでいたところがありました。

調子が悪くなった自分は本来の自分ではない、だから故障部分を修理しなければ。

30代くらいまでは、このスタンスでいけるかもしれないけれど、これを中年期以降ずっとやり続けることができるのは、人類のうちごく一部のひとだけだと思います。SNSが普及して、割とこのwarriorタイプを目にすることが多くなって、こっちが標準に見えてしまうかもしれないけど、これに引きずられるとしんどい人の方がきっとマジョリティです。

できない自分を認める、自分の欠点を受け入れる、というのは、いろんなメンタルヘルス系あるいはスピリチュアル系の本に書いてありますが、理屈はわかっていても、それを実践するのは本当に難しい。

今回は、いろんなタイミングが重なって、自分を慈しむというのはどういうことか、そのとっかかりに触れることができたような気がします。

自分との対話

それからは自分だけのLINEグループを作って、そこにひたすら気づいたことを書き込んでいきました。
(AwarefyというアプリにAIチャット機能がついてAIと会話ができるようになりました。この会話記録をエクスポートできるなら使いたかったのですが、エクスポートはできないみたいなので、LINEを使いました。)

最初は、こういうワーク自体に疑いを持っていて、こんなことにまじめに取り組んでいる自分がバカみたいに思えます。「わー、バカだなー、こんなことしたって意味ないのになー」と思う自分と、「バカだなーって斜に構えて警戒している自分がいるなー」という自分を両方心に置いたまま、頭に浮かんだことを書き出していきます。

絶対人には言えないようなゆがんだ気持ちとかも、最初は自己弁護の理屈をてんこ盛りでつけながら書いていましたが、そのうちにそういう取り繕いも減っていきました。あんまりあからさまに書いてしまうので恥ずかしくなって、しばらくそこを開けない、ということもありました。(あんまり過去の書きこみがしんどくなったら、エクスポート保存だけしておいて、白紙に戻してまた始めるといいです。)

そのうちに、前向きで勤勉、という、自分では長所としているところが過去のしんどさの裏返しなんだなと感じたり、人間関係をうまく構築できない、という自分で短所ととらえている性質の、別の側面を見つけたり、小さな発見がぽろぽろありました。

文章でまとめるとたいしたことない感じになりますが、結構しんどかったです。

自分に起こった変化

で、GWはいったんいろんなことを忘れ、夫婦で旅行に行って楽しい時間をたくさん過ごしました。

そして休みが明けて、久々に職場に行ったら、見える景色も自分の口から出る言葉も前とはちょっと違っているのです。

嘘みたいに、うまくいかない人との関係が改善されました。
本当に魔法みたいで、なんだったんだろう、と、今でも不思議な気持ちです。キツネにつままれたような、というのはこういうことを言うんだな、と思っちゃう。

まだ1週間なので、また少しずつ衝突することもあるかもしれないけれど、相手が大好きになったわけでもないけれど、たぶんこのまま、まあまあよい状態が続くんじゃないかなあ、続くといいなあ、と思います。

Twitterを見る自分のスタンス

この本を読んで、自分へのワークをちびちびとやっていて、まず気づいた変化が、Twitterのおすすめタイムラインを眺めていてもあんまり心がとげとげしなくなったという点です。

おすすめタイムラインに流れてくる投稿をちょっと読みに行っちゃうと、この話題が好きだとみなされるのか、それ以降しつこく流れてきてしまいます。

無視したいけど気になって何度も読んでしまい、自分の中でどんどん煮詰まっていっちゃう感じがあって嫌だったんですけど、本を読みこみ、ワークをする中で、Twitterのよくない部分が私の視界では薄まったというか、心にシールドが張られてあんまり入ってこなくなったというか、そういう感覚が生まれました。

赤の他人の発言に対してもやもやしたり、腹が立って何か物申したくなるというのは、そこに何らかの形で自分を投影しているからなんだということをしみじみ実感します。

私自身がそれを悟ったからと言って、即座に聖人君子になれるわけではなく、いつまでたっても同じ過ちを繰り返すのでしょうが、そんな過ちを「そういう気持ちになること、どうしてもやっちゃうことってあるよね…」と、他人に対しても自分に対しても抱くことができるということが、自分自身にとってものすごい救いになりました。

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去年出した本にも、自分を受け入れることについて書いていますが、ここから自分自身がまた一歩踏み出せたなと感じています。
あらためて、編集者さんはよいタイトルをつけてくださったなと感じます。

2021年6月にKindleセルフ出版した『ときほぐす手帳: いいことばかりが続くわけじゃない日々をゆるやかにつむぐ私のノートの使い方』が、...

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