This Time Tomorrow by Emma Straub 読了



Emma StraubのThis Time Tomorrowを読み終えました。

私の大好物・タイムトラベルものだと聞いて、積読していた2022年春発売の作品です。

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著者の過去の作品All Adults Hereも読んだのですが途中で止まっています。
機能不全に陥っている家族の抱える問題が山盛りすぎて重たく、最後まで読めず。

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なので新作も読み切れるか不安でしたが、内容紹介文につられて、セールの時に買っておりました。

ThisTimeTomorrow

ざっくり紹介

40歳の誕生日を迎えるアリスが1996年の16歳の誕生日に戻ってしまうというお話です。
16歳の自分のからだの中に40歳の自分がいて、16歳の誕生日のいちにちをやり直すことになります。

タイムトラベルというSFモチーフですが、深くこみいってはなく、登場人物も多くないのでとっつきやすいです。ただ、設定から発生しうる諸問題?矛盾?が気になり、ストーリーに入り込めない部分もありました。
つじつまがしっかり合わないと気になる人はモヤモヤするかもしれません。

また、大きな事件が起こってそれを解決、というような山場がなくゆったりと進んでいくので、もどかしい部分もありました。

タイムトラベルもの

バックトゥザフューチャー、ペギー・スーの結婚、リンクル・イン・タイム…。
物語の中で、さまざまなタイムトラベルものの名前が出てきますが、アリスのタイムトラベルは、マーティ・マクフライタイプではなく、ペギー・スータイプだとアリス自身が解説してくれます。

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この作品の、主人公が自分が生きたかもしれないいろんなバージョンを体験するというところに、マット・ヘイグの『ミッドナイト・ライブラリー』を連想しました。

The Midnight Library、読了しました。 生と死のはざまにある真夜中の図書館 「自殺未遂から、あ...

タイムトラベルのきっかけとなるポータルを見つけ過去に行く(そして割と淡々とした起伏のない話が続く)という点では、最近読んだクルコフのThe Gardener from Ochakovのことも思い出し、タイムトラベルではないけれど、高校生のからだに大人の自分のこころが入っちゃうという設定では、ザック・エフロン主演映画『17アゲイン』も同じカテゴリ。

アリスがタイムトラベルのポータルを経由し、行けるのはいつも16歳の誕生日。彼女にできるのは、ピンポンのように16歳と40歳を行き来することだけ。

ここからネタバレあり(タップで開く)
16歳の誕生日をどう過ごしたかによって、戻るたびに40歳の自分の環境が変わっています。もともとは未婚だったのに、子供を産んで別の場所で暮らしていたり。

もし変えられるなら、どう変わっていてほしいかと考えたとき、アリスは、オリジナルとは別のバージョンの自分になることではなく、病床にいる父親が健康に過ごしている世界に変わっていることを望みます。アリスが16歳のときの父親は、当たり前ではありますが、アリスが40歳の時点の父親よりもずっと若く、元気なのです。

16歳の1日をどう過ごすかによって、未来の自分が変わっている。最初は自分の理想に近づけるためにあれこれ試してみますが、実際のところ、大きな変化は「16歳の誕生日パーティでふられた彼氏と結婚しているか、いないか」くらいだということに気づきます。そして、彼氏と結婚し、裕福で子供がいるバージョンの自分の暮らしを、アリス自身はちっとも素敵だと思えないのです。

結局、彼女は未来を変えようとはせず、ただ親友サムと元気で若いころの父親と過ごすだけのためにタイムトラベルを続けてしまいます。

結局、父親は煙草をやめて癌を回避しても、度重なるタイムトラベルのために身体に負荷がかかり、どうやっても長生きバージョンにはたどりつけないということがわかったのですが、アリス16歳のときにいた猫Ursura(絶対ル=グウィンと関係がある名前)がアリス40歳のときにも元気で暮らしている!猫ちゃんは何か秘密を持っているはずなのですが、それは明かされないまま物語は幕を閉じます。

「もしも」が現実化したパラレルな世界での「明日」において、アリス以外の人がどう暮らしているんだろうとか、どちらにしてもアリスはオリジナルバージョンの40歳には戻れそうにないとわかり、自分は経験していない空白の20数年間を抱えたままその後の人生を生きるって苦痛ではないんだろうか、とか、いろいろ考えてしまいます。

娘が自分を救うためにタイムトラベルを繰り返していることを悟ったらしい父親のことばの数々がとてもうつくしいです。

作者エマ・ストラウブの父親で作家のピーター・ストラウブは、長い入院生活の末、昨年秋に亡くなりました。
この物語には、自身と父親が投影されていることをエマ・ストラウブはインタビューで語っています。小説を読むことで父娘で気持ちをやり取りしあう場面がいくつかあるのですが、娘としてのエマ・ストラウブの気持ちを思うと胸が痛みます。

アリスと同じ40代だからこそ響くおはなしなのかなと感じました。これまで生きてきた半生を振り返る時期だし、親の老いや死に直面しなければならない年代ではあるし。

オーディオブックも気になる

私は活字で読了したのですが、レビューを見てみると、オーディオブックで朗読を担当しているMarin Irelandがほめちぎられているので、もういちど聴き読みしようかと思っています。

調べてみると、マリン・アイアランドは女優さんで、いろんな映画やドラマに出演されてるんですね。さらにオーディオブックの朗読でも活躍されていて、Remarkably Bright Creatures、The Push、Leave the World Behind、バックマンのAnxious People(持ってる)、ジョディ・ピコーのWish You Were Hereなどなど、最近の話題作に軒並み参加されてます。

ドキドキハラハラ、ページをめくる手が止まらない、というタイプの小説ではありません。テーマも重すぎないので、さらっと、でもゆったり、という読書タイムに合いそうです。私は通勤時間に淡々と読んでました。時間があくと筋書を忘れてしまって、何度も後戻りしながら読み終えました。

愛の物語ではあってもロマンス要素はほとんどないところも、私がこの作品を気に入った理由の一つです。

40代って前向きな気持ちベースで生きていても、ふっとブルーな気持ちにとらわれることが多くなりがちで、そんな私にとっては、「unhappyではないけど、happyだと感じられることもそんなになくてつまんない私の人生」みたいなアリスの閉塞感に共感できるところが多かったです。

次は何を読もうかと考えていて、あともうちょっとで読み終えるThe Gardener from Ochakovにしようかとも思ったのですが、ジャンル的に似たところがある最近の話題作、Gillian McAllisterのWrong Place Wrong Timeを検討してます。こっちはジェットコースター的展開っぽいので、気分を変えるのにちょうどよいかも。