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ガブリエル・ゼヴィンのTomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow を読み終えました。
表紙からわかるように、日本文化がモチーフになっています。この作品のゲームだけでなく、いろんなところで日本に関するエピソードが出てきます。

そして波。表紙の北斎の神奈川沖浪裏が印象づける通り、主人公たちはありとあらゆる波にもまれます。高まり、傷つき、離れ、そしてまた出会う。
3人の若者が夢を追い、愛し傷つき、成長していく30年。
読んだ後、いつまでも彼らのことを思い出してしまう、そんな物語です。
同じ時代を生きたから
この物語に出てくるSamとSadie、そしてMarxが自分と同世代であることが、この物語の味わいを深めていると思います。
同じ時代を生きた自分とつい重ねてしまうから。
彼らはゲームの世界に身を置き、成功しますが、読者は必ずしもゲームを理解する必要はありません。私も全然ゲームには詳しくないですが、彼らのゲームへの愛、彼らの作るゲームの物語性について十分理解できました。
それにしても、私たちの時代のドンキーコング、そしてスーパーマリオは特別な存在だったなあと思います。
みんなが同じものに夢中になった時代。
携帯電話がなかった時代。
生々しい人間関係
SamとSadieはどちらも、かわいらしくて、傷ついていて、そして欠点だらけです。
彼らそれぞれの考え方、そして行動に読んでいるこちらはいちいちイライラするのですが、イライラしながらも彼らがなぜそうするのか、そう思うのかを理解できてしまいます。
特にSamが大事なことを言わずに、誤解のタネをまき散らしてしまうのは本当に腹が立つのですが、彼の身体で、彼の生きてきた環境に置かれれば、そうなるのも無理はないかなと納得してしまう。
SamとSadieの生々しさに比べると、Marxはスーパーマンです。
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Marx自身は語らないしはっきりとは描かれないけれど、彼にもさまざまなつらい出来事、努力だけではどうにもならないたくさんの挫折があったはずなのに、彼はその強靭な精神力でもって、それらを彼の中できちんと片づけてしまう。
強烈な個性を持つ天才ふたりをそばで支えるのは並大抵のことではないでしょう。現実を見てきちんと実務をこなせる彼がいなければ、天才ふたりはそもそも世に出ることもなかったかもしれません。
完璧なMarx。優しいMarx。
友の夢を自分のものとして心から大切にでき、他人から見て凡庸であることを自分に許し、それでも誇りを失わないMarx。
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私の中でこの物語の本当の主人公はMarxです。
あの頃そうだったこと
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SamとMarxが混血のアジア系アメリカ人であること、そして女優をめざしたSamの母Anna Leeの自殺(そして数多くのAnna Leeがアメリカで生きる現実)、Marx自身がぶつかる人種差別。
ゲームの世界で成功を夢見るSadieが経験する、さまざまな困難。MITに女子学生はとても少なかったこと。権力勾配のある中での恋愛関係、DV。ゲームの主人公を無理やり男の子にさせられたこと。(Dovを完全な悪者として描かなかったのはすごく深いと思いました。でもやっぱり嫌な奴だけど。)
今では「間違っている」と認識されているいろいろなことが、あの頃はそうでもなく、問題が言語化されてすらいなかったものも多くありました。
逆に、日本人ではない彼らが日本の子どもを主人公とした作品を世に出したことが、現代であれば問題視されるであろうことにも言及されています。文化の盗用、というやつ。
あの頃の寛容さ、あいまいさがあったからこそ生み出された芸術作品があったこと。そしてそれ以上にその曖昧さの陰で、苦しんでいた人もたくさんいたこと。
ジグザグに上がったり下がったりしながらも、世の中がよいほうに向かっていると信じたい。
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時代が行ったり来たり
物語は、20世紀の終わり、SamとSadieの再会の場面から始まります。
その時彼らは大学生。
SamとSadieとで章ごとに視点を変えつつ、時間もふたりが初めて出会った子ども時代に戻ったりもしつつ、物語は進んでいきます。
時間軸が行ったり来たりするので最初はちょっと読みにくいかもしれませんが、登場人物が多くないので、慣れてくればスピードアップしていきます。
400ページ越えで私にとってはかなり厚い本でしたが、後半はほんとうにあっという間でした。
とてもよい読書体験ができました。
Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow 読み終わりましたー。
あー、読んでる間ずーっと胸が痛かった。でもすばらしい物語でした。
https://t.co/IiNxg0I6Nj— Marie 📗 (@marie__100) January 29, 2023
ガブリエル・ゼヴィンの作品を原書で読んだのは初めてではなく、過去にはThe Storied Life of A. J. Fikryも読みました。こちらもとてもよかった。日本語版も出ていますね。

次は何を読もうかと、積読本と気になってサンプルをDLした本から見つくろっているところです。
有力候補は、同じ「Tomorrow」がタイトルに入ってる Emma StraubのThis Time Tomorrowです。
タイムトラベルもの。
エマ・ストラウブってピーター・ストラウブの娘なんですね、知らなかった。
※BOOX Leaf2で読みました。




