荒潮 陳楸帆 読みました



まずは中国語で読んだ、陳楸帆の《荒潮》。

日本語でも読み終えました。

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作品自体は2013年に発表されていて、『三体』と同じく、それほど新しい作品ではありません。
(中国のベストセラーリストって、いつも10年以上前の作品が入っていて、不思議です。日本ではあんまりない現象だと思う。)

近未来SFジャンルの作品は、時間の経過はシビアな影響を与えることもあると思うんですけど、全然古びた感じがしないのはすごいと思います。

あらすじと、ざっくり感想

世界のゴミ捨て場として機能する中国南東部のシリコン島で、ゴミの処理をするのは「ゴミ人」と呼ばれる最下層市民。

島で環境再生プロジェクトを立ち上げるため、やってきたテラグリーン社のブランドルと、その通訳として雇われた島出身の陳開宗。

地元の有力者たちとブランドルとの攻防、格差社会の中であらがう「ゴミ人」たちのムーブメント、そういった敵対関係の中で、開宗はゴミ人のミーミーに恋愛感情を抱いていきます。

ゴミの島と化したシリコン島の、ゴミとそれを扱う人たちの描写がすごいです。
機械を導入するよりむしろ、人間を使い捨てたほうが安上がり、という状況は、近未来でなく現代ですでに起こってしまっているのがこわい。

物語の結末がどこに行くのかまったくわからないまま、ものすごい速さでストーリーが展開していきます。
日本語で再読したときには(『三体Ⅰ』日本語版を読んだ時もそうでしたが)、こんな難しい内容、よく原語で読めたなあと我ながら感心してしまいました。

ゴミの内容や生身の人間に装着するハイテクガジェットの説明はほんとうにわかりづらかったです。ブランドルと開宗がセットで登場するシーンはそうでもなかったけど。
後半は登場人物がさらに増えて、混乱を極めましたが、混乱したまま最後まで読んでしまいました。中国語で読んでいるときは(中国語読解力が足りない…)と悔しがっていましたが、日本語で読んでも混乱したので、そもそもの読解力の問題ならしかたないかとあきらめがつきました。

好きか、嫌いか、というと、どちらかというとあんまり好きじゃないタイプの小説です。とにかく湿っていて、グロい。
それでも、これまで見たことのない世界を見せてくれたという意味ではすごい作品だなと思います。

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