中国語翻訳勉強会・第4回訳と第5回課題



第5回の課題はこの記事のいちばん下に掲載しています。

第4回課題

訳1
4. 「ヒーロー」ブランドの万年筆

以前「ヒーロー」ブランドの金の万年筆を持っていました。まだ高校生だった頃、父がプレゼントしてくれたものです。父は古風な人で、ボールペンより万年筆を、簡体字より繁体字を、建築より書道を、ウールの絨毯より木の床を、そして、自分より私のことを愛していました。

父は、お気に入りの子どもたちひとりひとりに万年筆をプレゼントしていて、兄や姉たちは皆持っていました。小さい頃は、それらの万年筆のことを成長の証だと思っていました。

私が大きくなり、父は万年筆をプレゼントしてくれました。家から離れた学校に通うことになったとき、その万年筆を持っていったけれど、ほとんど使わなかった。それ以来、父はいつも、あの金の万年筆は使いやすいかい?字は滑らかに書ける?どんな色のインクを使っている?と尋ねました。私が、まだ使ってない、と答えるとすぐにがっかりしたような口調になりました。

私は今日になってようやく気づきました。自分が気に入っているものを愛している人にプレゼントをして、相手がそれをまるで気に入ってくれなかったとしたら、どんなにがっかりし、さびしく思うかを。

そのことに思い至り、急にその万年筆を探さずにいられなくなったけれど、見つからなかった。

お父さん、あなたのことが恋しい。

訳2
4.英雄ブランドの万年筆
昔持っていた万年筆、それは中学生の頃にパパがプレゼントしてくれたものだった。私のパパはちょっと古くさいところがあって、ボールペンより万年筆、簡体字より繁体字、設計図を引くことより筆で字を書くこと、羊の毛の絨毯よりフローリングを好んでいた、でも私のことを自分よりも気にかけてくれていた。
パパは愛する子どもそれぞれに英雄ブランドの万年筆をプレゼントしたから、兄や姉は皆持っていて、私にとって万年筆を持つことは一人前の証しだった。
その後大きくなった私はパパから万年筆をもらったのに、遠くの学校に通っている間に使わなくなってしまった。けれどもパパは私にいつも聞いてきた。ペンの調子とか、字の感じとか、今のインクの色とか。なのに、私の返事が冴えないもんだから、パパはがっかりしていた。
そう、今になってやっとわかった、お気に入りのものをお気に入りの相手にプレゼントしたのに全然良さが伝わってないってことがわかると、落ち込み方もひどいってことを。

気づいた私は、はっとして不憫な万年筆をさがしたけど見つからず・・。

パパのことが心に浮かんでいるのに。

訳3
ヒーローの万年筆

私は以前、ヒーローの万年筆を持っていました。高校生のとき、父がくれたものです。父は古風な人で、ボールペンよりも万年筆を愛し、簡体字よりも繁体字を愛し、建築よりも書法を愛し、ウールのカーペットよりも木の床を愛して、自分のことよりも私を愛してくれました。

父はかわいがっている子供たち全員にそのヒーローの万年筆をプレゼントしていて、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちもみな持っていたので、小さいころ私は、その万年筆を持てるのが成長したことの象徴のように思っていました。

そのうち私も大きくなって、父は万年筆をプレゼントしてくれ、遠くの学校に行くときに私はそれを持っていきましたが、使うことはめったにありませんでした。でも父からはよく、あのペンは使いやすいか、とか、よく書けるか、とか、何色のインクを使っているのか、とか聞かれていました。私が毎回、まだ使っていないと答えると、父は目に見えて落ち込んだ口調になっていました。

今日、私には分かりました。自分が慈しむものを愛する人に贈ったのに、その相手と思いを共有できないのがどれだけ残念で、わびしいことか。

そう感じた私は、胸が苦しくなってあの万年筆を探してみましたが、見つかりはしませんでした。

お父さんに会えなくて、寂しいよ。

訳4
4.英雄印の万年筆

昔、金のペン先の英雄万年筆を持っていた。高校生の頃、父がプレゼントしてくれたものだ。父は昔気質のひとなので、ボールペンよりも万年筆が好きなのだ。簡体字よりも繁体字、建築よりも書道、ウールの絨毯よりも板張りの床を愛する父。父自身よりも、娘の私を大事に思ってくれる人。

父は、お気に入りの子どもに必ず英雄の万年筆を贈っていた。年上のいとこたちがみんなもらっているのを見て、小さな私は、万年筆は子供たちの成長のしるしなのだと思っていた。

それから私も大きくなって、父から万年筆を受け取った。遠くの大学に進学するときにも持って行ったが、使う機会はほとんどなかった。
「金ペンの使い心地はどうだ?」「書きやすいかい?」「何色のインクを使っている?」
父はよく万年筆について尋ねてきたが、私はいつも、まだ使っていないのと答えるばかりで、そんなとき、父の声は急に元気がなくなってしまうのだった。

今ごろになってようやく気づく。愛する人に、自分が大切にしているものを贈っても気にもかけてもらえないとしたら、どんなにむなしく哀しいことだろう。

いてもたってもいられなくなり、あの万年筆を探したが、なぜだかどこにも見当たらない。

今、とても父に会いたい。

訳5
4.英雄印の万年筆

 私は以前、英雄印の万年筆を持っていました。未だ高校生の頃、父から貰ったものでした。父は昔気質の人間で、ボールペンよりも万年筆が好き、簡体字よりも繁体字が好き、建築よりも書道が好き、羊の毛の絨毯よりも木張りの床が好きと言った具合です。そして、自分自身よりも子供たちを愛しているのです。

 父は愛する子供たち皆に万年筆をくれたので、兄姉たちは皆持っていました。私は小さい時、このような万年筆を持つことが成長のあかしなのだと思っていました。

 後に、私が成長してから、父は私にも万年筆を贈ってくれました。私はその万年筆を持って、遠くの学校に来ましたが、殆ど使いませんでした。後になって父に、あの金ペンは使いやすいかどうか、字がスラスラ書けるかどうか、何色のインクを使っているのかなどとよく尋ねられましたが、私はいつも未だ使っていないと答えました。すると、途端に父はガッカリした口ぶりになってしまうのでした。

 自分の好きなものを愛する人にあげても、その人がその品物に対して全く興味を示さなかったら、其の落胆と寂しさはどんなに大きなものかを、私は、今頃になってやっと知りました。

 ここまで思い至った時、突然あの万年筆を探し出したくてたまらなくなりましたが、見つけ出すことは出来ません。

 ああ、懐かしいお父さん、あなたにとても会いたい。

訳6
ヒーローブランドの万年筆

わたしは以前、ヒーローブランドの万年筆を持っていた。まだ高校生の頃、父さんが送ってくれたのだ。
父さんは昔気質なひとで、ボールペンより万年筆、簡体字より繁体字を、建築より書道を、絨毯より木の床を好んだ。そして自分よりわたしのことを愛してくれた。

父さんは愛する子どもみんなにヒーローブランドの万年筆を送った。兄さん姉さんたちはみんな持っていて、小さい頃はそんな万年筆を持っていることが成長の証と考えていた。

その後大きくなって、父さんは万年筆をわたしにもくれた。わたしはそれを持って勉学のために家を出た。万年筆を使うことはほとんどなかった。父さんはよく私に、「あの万年筆の使いごこちはどうだ。字はよく書けるか。何色のインクを使っているんだ。」とたずねた。わたしがいつも、「まだ使っていないわ。」と答えると、父さんはすぐにがっかりした表情を浮かべた。

今になってやっと分かったけど、自分の大事にしているものを愛する人に送る人は、本人はそう思っていなくても、どんなに落胆して寂しく思っていることか。

ここまで考えて、突然やりきれない気持ちになってあの万年筆を見つけたかったけど見つけることはできなかった。

父さん、会いたいよ。

訳7
4.HEROの万年筆
私は以前HEROブランドの金の万年筆を持っていた。まだ高校生の頃、父親がくれたものだ。父は昔風の人で、ボールペンより万年筆を愛し、簡体字より繁体字、建築より書道、羊毛のじゅうたんより木の床を愛し、そして、自分よりも私のことを愛してくれた。
父は愛する子供たちそれぞれに一本、HEROの万年筆をくれた。兄も姉もみんな持っており、小さい頃はこのように万年筆を持つことを成長のシンボルと捉えていた。
大きくなってから、この父がくれた万年筆を、私は読書の向こうに追いやってしまい、使うことが少なくなった。その後父はよく、あの万年筆は使いやすいかい?すらすら字を書ける?何色のインクを使っているの?と私に聞いた。私はいつもまだ使ってないと答え、父はたちまち語気を落とした。
今日になって、私はやっとわかった。自分が愛するものを自分の愛する人にあげたのに、その人がまったく愛してくれなかったら、どれだけ落ち込むか、どれだけ悲劇か。
こう考えるに至って、突然たまらなくなって、ペンを探そうと思ったが、見つからなかった。
お父さん、懐かしいよ。
訳8
3.英雄の万年筆
かつて英雄の金色万年筆を持っていた。まだ私が高校生だったころ父が贈ってくれたものだ。父は昔気質の人で、ボールペンよりは万年筆を、簡体字よりは繁体字を、建築よりは書道を、ウールの絨毯よりはフローリングを、自分よりは私を愛してやまない人だった。

父は愛する子どもたちそれぞれに英雄の万年筆を与えた。兄も姉もみんな持っていて、幼いながらにもそれを持つことが「大人になった証」
のようだった。

やがて私も大きくなり、父から万年筆をもらうと、遠くへ進学したときにも持って行ったが、使うことは少なかった。そして父がよく私に万年筆の使い心地や書き味、使っているインクの色などを聞いてくるが、私はきまってまだ使っていないと答える。すると父はガッカリした様子になった。

自分が大切にしているものを自分の愛する人に贈る。しかし決して相手にはそのように受け取られない。そのことがどんなに悲しく寂しいことだろうか。今になってよくわかるのである。

ここまで思いをめぐらせて、辛い気持ちになってその万年筆を探してみたが見つからなかった。

お父さん、とても会いたいです。

訳9
昔私はHEROの金ペンを一本持ってた。まだ私が高校生の頃に父がくれたものだ。
父は昔気質の人で、ボールペンより鉛筆、簡体字より繁体字、建築より書道、フローリングよりカーペットを愛していて、そして自分のことより私のことを愛してくれる人だった。
父は愛する子供たち皆にHEROの万年筆を贈ってくれた。兄や姉たちみんなに、だ。
幼い私にとってその万年筆は成長の証のようだった。
私が大きくなった時、父は私にも万年筆を贈ってくれた。
私はその万年筆を持って遠くまで本を読みに行った。でも、それを使うことはあまりなかった。
父はよく私に、あの金ペンは使いやすいか、スルスルと書けるか、何色のインクを使ってるんだ、と聞いてきた。私はいつも、使ってないと答えて、父を落ち込ませた。
今になってやっと、自分の愛するものを愛する人に贈ったのに、贈った人がそれを全くよいと思わないという事が、ひどく悲しいことなのだと思い至った。
思い至ったことで私は急に悲しい思いでその万年筆を探した。でも、見つからなかった。

お父さん、あなたにまた会いたい。とても、恋しい。

訳10
4.『英雄』の万年筆

私は『英雄』のペン先が金の万年筆を持っていた。まだ高校生の時に父がくれたものだ。父は古風な人で、ボールペンより万年筆を愛し、簡体字より繁体字を愛し、建築より書道を愛し、絨毯より板張りを愛した。そして、自分自身より私を愛してくれた。

父はかわいい子どもたちみんなに『英雄』の万年筆を送った。兄も姉も持っていたので、小さい頃、万年筆を持っていることが大人になった証なんだと思っていた。

私が大きくなって、父は私に万年筆をくれた。その万年筆を持って遠くの学校へ行っていたけど、使うことはほとんどなかった。父はよく「あの万年筆の使い心地はどうだ?」「書き味はなめらかか?」「何色のインクを使ってるんだ?」と聞いてきた。私が「まだ使ってない」と答えると、父の語気は弱くなった。

今になって気付く。自分が好きな物を自分が好きな人にあげたのに、その人がなんとも思ってくれない。それがどれだけがっかりするさみしいことかと。

そう思ったら、急に胸がいっぱいになってあの万年筆を探しにいきたくなった。でももう見つからない。

お父さん、会いたいです。

訳11
4.英雄ブランドの万年筆

私は以前英雄ブランドの高級万年筆を一本持っていた。私がまだ高校生だったころ、父が贈ってくれたものだ。父は古風な人で、ボールペンより万年筆を愛し、簡体字より繁体字を愛し、建築より書道を愛し、羊毛の絨毯より木の床を愛し、自分のことより私のことを愛してくれた。

父は自分の好きな子供一人一人に英雄の万年筆を贈っていたので、兄も姉もみんな持っていた。私は幼いころ、この万年筆を持つことを成長したことの象徴だと思っていた。

やがて私が成長したので、父は私に万年筆を贈ってくれた。私はその万年筆を持って遠方に行き就学したが、それを使うことはほとんどなかった。その後父はいつも私に、あの万年筆は使いやすいか、なめらかに字が書けるか、何色のインクを使っているのかと尋ねた。私がいつもまだ使っていないと言うと、父の口ぶりはにわかにとても落胆したものになった。

今になって、私はやっとわかるようになった。自分が大事にしているものを自分が愛している人に贈ったのに、その人が全くいいとは思ってくれないのは、どれほど落胆しもの寂しいことなのか、ということを。

そう思いいたって、私は突然つらい気持ちになりあの万年筆を探したが、見つけ出すことはできなかった。

お父さん、私はあなたがとても恋しいです。

訳12
4. ヒーロー万年筆

かつてヒーロー万年筆を持っていた。高校生の時父がくれたものだ。父は古風な人で、ボールペンより万年筆、簡体字より繁体字、建築より書道、ウールのじゅうたんより板張りの床、自分よりも娘である私のことが好きだった。

父は愛する子供たちにヒーロー万年筆を1本ずつプレゼントしていて、兄や姉たちはみんな持っていたので、小さい頃はあの万年筆を持つことが成長の証だと思っていた。

それから大きくなった私は父から万年筆をもらい、遠くの学校に行く時持っていったが、ほとんど使わなかった。父には「万年筆はどう?」「書き心地は?」「インクはどんな色?」とよく聞かれた。私が毎回「まだ使ってないよ」と答えると、父の声は急に変わり、がっかりしていた。

今では父の気持ちが分かる。自分の好きな物を好きな人にあげた結果、全く気に入ってもらえないと、どんなに寂しく気落ちしてしまうものなのか。

ここまで思い出したら突然辛くなってきて、その万年筆を探したが見つからなかった。

お父さん、会いたいよ。

訳13
4.英雄ブランド*の万年筆

以前、英雄の金ペン先の万年筆を持っていた。高校生の頃、父が買ってくれたものだ。父は古いタイプの人間で、ボールペンより万年筆、簡体字より繁体字、建築より書道、ウールの絨毯より木の床を好み、自分自身より私のことを大切にしてくれた。
父はお気に入りの子ども一人ひとりに英雄の万年筆を与えていて、兄姉たちは皆持っていた。幼い私の目には、このような万年筆を持つことは成長の象徴として映った。
私が成長すると、父は万年筆を贈ってくれた。親元を離れ進学する時、この万年筆も荷物に入れたが、使う機会は少なかった。その後父はよく私に尋ねた。「あの万年筆は使いやすいか」「書き心地は滑らかか」「何色のインクを使っているのか」と。いつも「まだ使っていない」と答えると、たちまち父の口調は力のないものに変わった。
今になってようやくわかった。自分が大切にしているものを好きな人に贈っても、その人に全く思いがが伝わらないと、とても落ち込み寂しい気持ちになることを。
ここまで 思いを巡らせると、突然悲しみがこみ上げあの万年筆を探したいと思ったが、見つからなかった。
お父さん、あなたに会いたいです。

*中国の有名筆記具ブランド

訳14
ヒーロー印の万年筆

昔ヒーロー印の万年筆を持っていました。私がまだ高校生の頃、父が私にくれたものなんです。父は古風な人で、ボールペンより万年筆の方が好きで、簡体字より繁体字の方を好み、建築より書道に興味があり、ウールの絨毯より木目の床が好きで、自分自身よりもずっと私を愛してくれていました。

父は、自分が好きな子供たち1人1人にヒーロー印の万年筆を贈っていて、兄や姉たちもみんな持っていたんです。小さい頃、このような万年筆を所持していることが成長の印だと考えていました。
のちに私が大きくなって、父から万年筆をもらってね、それを持って遠くの地域の学校に行ったんですけど、滅多に使わなかったんですよ。それからというもの、父はよく、あの万年筆は使いやすいか、字がすらすらと書けるか、何色のインクを使っているのか、と聞いてきたんですけど、私が、まだ使っていない、って言う度に父の語気が急に下がったのを覚えています。

今になって、自分の大切な物を自分が愛する人に贈っても、相手がそれを大して大事にもしていなかったら、凄くガッカリするし、心寂しいことだという事がやっと分かったんです。

ここまで考えて急に辛くなって、あの万年筆を探してみたけど、見つからなかった。。。

お父さん、また会いたいわ。

訳15
英雄ブランドの万年筆

私は以前、英雄ブランドの万年筆を一本持っていた。まだ高校生だった頃、父が私にくれたものである。
父は昔風の人で、万年筆よりボールペン、繁体字より簡体字、書道より建築、フローリングより羊の絨毯を好み、私より自分自身を愛する人であった。
父はそれぞれ愛する子供たちに英雄ブランドの万年筆を贈った。兄や姉たちもみな持っており、うんと小さかった頃、私はこのような万年筆を持つことを成長の証だと思っていた。
のちに私が大きくなると、父は万年筆をくれた。私はこのペンを遠方の大学へ進学した時に持って行ったのだが、滅多には使わなかった。
その後も父は常常私に、「あの金の万年筆は使いやすいか?」「すらすらと書けるか?」「何色のインクを使っているんだ?」と尋ねた。
私がいつも、「まだ使っていない」と答えると、父の口調はたちまちダウンする。

最近になってようやく私は気づいた。自分が大切にしているものを自分が愛する者に贈ったとしても、その人がまったく気にも止めなかったとしたら、どんなに悲しく寂しいことだろう。

このことに思い至って私はふと悲しくなり、あの金の万年筆を探してみたのだが、見つけることはできなかった。

お父さん、あなたが懐かしい。

訳16
ヒーローブランドの万年筆
以前私は筆先が金色に輝く高価な万年筆を持っていた。それは私がまだ高校生の時のことで、父が私に買ってくれたのだ。父はとても昔気質で、ボールペンよりも万年筆を、簡体字より繁体字を、建築より書道を、羊毛の絨毯より板張りの床を好むような人だ。そして彼自身よりも私のことを愛してくれた。
 父は愛する全ての子供達にヒーローブランドの万年筆を贈っていた。兄や姉も持っており、このような万年筆を持つことが成長の証なのだと小さい頃は思っていた。
 私は成長し、父は私にも万年筆を贈ってくれた。私はそれを持って遠くの学校へ行ったのだが、その万年筆を使うことはほとんどなかった。あの万年筆は使いやすいか、滑らかに書けるか、どんな色のインクを使っているんだ、と父はいつも私に尋ねてきたが、私は常にまだ使ってないと答えるしかなかった。すると父の語気が急に低調になった。
 今になってようやく気付いたのだ。愛する人に大事なものを贈ったにもかかわらず、その人がそれを大切にしてくれない、それがどれほど失望と寂寥感を与えるのかということを。
 ここに思い至ると、突然私はやりきれない思いに駆られ、急いで万年筆を探した。が、それはどこを探しても見つからなかった。
 父さん、会いたいよ。
訳17
「英雄」ブランドの万年筆

かつて「英雄」ブランドの高級万年筆を持っていた。私がまだ高校生の時のことで、父が私にくれたものだ。父は老舗好きで、ボールペンより万年筆を愛していた。父は簡体字より繁体字を愛し、建築より書道を愛し、毛織のじゅうたんより板張りを愛し、自分を愛すより私を愛していた。

父は愛する我が子みなに「英雄」ブランドの万年筆を送った。兄も姉も二人とも持っている。幼い頃、この万年筆を持つことは自分が大人になる証だと思っていた。

そして、私は大人になった。父が私に万年筆をくれたのだ。私はこの万年筆を持って、地方の大学に行ったのだが、あまり使わなかった。それから、父はしょっちゅう私に「あの万年筆は良いか?」「書き心地は滑らかか?」「何色のインクを使っているのか?」と尋ねてきた。私がいつも「まだ使っていない」と言うと、にわかに父の声が沈んだ。

今になって、やっと分かった。自分の大事にしている物を愛する人に贈る。だけど、贈られた側はなんとも思っていない。それが、どんなにがっかりし、むなしいことか。

こんなことを思っていると、急に心苦しくなって、万年筆を探したくなったのだが、見つからなかった。

お父さん、会いたいよ。

訳18
4.ヒーロー万年筆
以前私はヒーローの万年筆を持っていたことがある。私が高校生の時、父がプレゼントしてくれたのだ。父は古風な人で、万年筆への愛情はボールペンよりも勝り、繁体字への愛情は簡体字よりも勝り、書道への愛情は建築よりも勝り、板の間への愛情は羊毛の絨毯よりも勝り、私への愛情は己への愛情より勝っていた。

父は大好きな子供たちそれぞれにヒーローの万年筆を与えており、兄や姉達も皆持っていて、幼い頃、そういった万年筆を持つことは成長の証であった。

その後私も成長し、父は万年筆を贈ってくれ、私はその万年筆を持って勉強のため遠方へと旅立ったが、使う事はあまりなかった。それから父は、あの万年筆は使いやすいか?なめらかに字が書けるか?何色のインクを使っている?としょっちゅう聞いてきたが、私はまだ使っていないと答えるばかりで、父の口調はすぐさましぼんでいってしまった。

今になって、はっきりとわかるのは、自分がとても愛しているものを自分の愛する人に贈ったものの、その人に全く受け入れてもらえないのは、なんとも残念で寂しいということだ。

ここまで思い立って、私は突然あの万年筆を探したい思いに駆られたが、万年筆は出てこなかった。

お父さん、あなたに会いたい。

訳19
4.ヒーローの万年筆

わたしはかつて、ヒーローの万年筆を持っていた。わたしがまだ中学生だった頃、父がプレゼントしてくれたのだ。父は、昔かたぎなところがあり、ボールペンよりも万年筆、簡体字よりも繁体字、建築よりも書道、羊毛の絨毯よりも木製の床という人で、そして自分よりもわたしのことをかわいがってくれた。

父は、かわいい子どもにヒーローの万年筆をくれた。弟、姉たちもみな幼いころから持っていた。わたしはこの万年筆を成長の証として、持っていた。

わたしが大きくなってから、父に万年筆を贈ってもらい、遠くに読書をしに行くときに持って行ったので持ち出すことは少なかった。父はいつも、万年筆は気に入っているか。書き味はどうだ? どんな色のインクを使っているのかと尋ねるのだが、わたしはいつも返事をしないと、すぐさま元気のない話しぶりになるのだった。

今になって、わたしはやっと理解できた。自分にとって大事なものを大事な人に贈って、その人がまったく気に入ってくれないと、どんなにがっかりしてものさみしいかということが。

ここまで思い出したのに、突然あの万年筆を探したくても探せないことがとてもつらい。

お父さん、ごめんね。

メモ

今回はわかりやすい内容だったと思います。
お父さんがくれた万年筆の思い出。

私も、万年筆ではないけれど、同じような申し訳なさを感じた記憶が多々あります。
あんまりモノにこだわるタイプではないので、もらってももらいっぱなしになることがあって、後から思い入れのある贈り物だったと気づいて、自分の反応の悪さを反省するのです。

今回のメモは、私の訳がどれかわかってしまうかもしれませんが、いろいろ気づいたことを残しておきたかったので、多めに書いています。

きょうだい?

中国の一定の世代は、特別な条件を満たしていない限り、たいてい一人っ子なので、「お兄さんやお姉さん」という記述に迷われた方も多いかと思います。

私の中国人の知り合いはたいてい親戚も含めて「お兄さん、お姉さん」と呼びます。テレビの対談番組などでも、いとこのことを「お兄さん、お姉さん」と呼んでいるケースをよく見聞きするので、この場合もそうなんだろうなと判断して訳しましたが、この追加が余計なものなのかどうかというところは判断が分かれる気がします。

筆者がひとりっ子だという情報を知っていたことと、「あれ?この頃の中国ってひとりっ子政策じゃなかったっけ?」というような余計な疑問が頭に浮かんで読者が本題からそれることのないように、という思いで付け加えました。

こういう部分でも、翻訳の難しさを感じます。

ブランド名

英雄という万年筆メーカーは、知る人ぞ知るブランドらしく、今回調べていたら、一本欲しくなってきてしまいました。

同じ表現の畳みかけ

「他爱~,他爱~,他爱~」のように、同じ言い回しを畳みかけるような表現を中国語ではよく見かけます。工夫のしどころがある文だなと思って、他の方の訳を見るのを楽しみにしていました。

会話文の訳し方

英語でも中国語でも、会話文なんだけど会話文じゃない文章をよく見ます。
「他问我~」とか、「He asked me whether~」とか、地の文にそのまま会話が埋まっていることが多いんですよね。

英語の原書と日本語訳を比べて読むとき、原書は「He asked me~」の形だけれども、日本語ではカギカッコの会話体に変えて訳されているケースがよくあります。

お父さんが筆者に、万年筆の使い心地はどんな感じか、いろいろ尋ねているのを回想している部分、私は会話体にしてみました。そのほうが、お父さんのわくわくしている感じ(そしてそのあとに続くがっかりした様子との対比)が伝わりやすいかなと思いましたが、どうでしょうか。

3つのde

的、得、地は、ブログやテキストメッセージなどでは、「的」で代用されることが多いです。
正式な文章ではちゃんとした表記に直すのでしょうが、「的、得、地=的」となっていることがよくあります。

実務翻訳の場でも、原文、チェックする訳文ともに、変換ミスをわりとよく見かけるので、原文の場合は変換ミスの可能性、訳文の場合は自分の変換ミスに気をつけないといけません。

第5回課題

今回は、エッセイの冒頭部分を切り出したものです。

締め切りは1月11日(木)とします!

訳についてのコメントや感想をつけてくださる方が多いので、もし希望が多ければ、公開可のコメントを一緒に見ることができるようにしようかと思っています。

アンケートの結果を見て検討しますので、よろしくお願いします。
公開してもよいコメントなどは、「公開してもいいコメント」欄へ、非公開希望のメッセージは、「感想など」のテキストボックスに入力ください。

感想やコメントも嬉しいので、ぜひ引き続き送ってくださいませ!

はじめてのかたは、初回の注意事項(↓)をよく読んで投稿してくださいね。

これまでいろんなオンライン勉強会を主宰してきました。 原書を輪読する会、ディクテーションを毎日やる会、テキスト1冊を期限までに仕上げる会…...

翻訳勉強会で使ったエッセイの日本語訳と、このエッセイを課題とした翻訳レッスンの実況中継を本にしました。

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