オンライン中国語原書会・第2回の作品紹介



私は好きな作家を見つけると、その作家の作品ばかり読むタイプなので、曹文軒に出会った後しばらくは彼の本ばかり読んでいました。とはいえ、それも前世紀の話なので、どれを読んだか、どんな内容だったかさっぱり忘れています。
今回再読してみましたが、新しい発見があったり、読者にゆだねる形の結末に以前とは違う感想を持ったりと、読書の楽しさをあらためて実感しました。

短編も含めて、ネタバレのないように簡単に紹介します。短編はボリュームも少なく、話もわかりやすいものが多いのでおススメです。興味のある方は夏休みにぜひトライしてみてください!

オンライン中国語原書会・第2回のお題です! | Mandarin Note
さて、オンライン中国語原書会、第2回は私が取りまとめをいたします!1回目の課題図書『活着』は、わりとメジャーな「原書読み初心者におすすめ本」なので、読んでいる方も多いのではないでしょうか。第2回の告知…

中国語原書会・短編小説を一緒に読んでみませんか | Mandarin Note
8/2追記:後半でお知らせしている、曹文轩の短編小説読書会につきまして。ツイッター以外の方法(メールなど)をもしご希望の方がいらっしゃいましたら、記事下のお問い合わせフォームからご連絡をお願いします。…

《守夜》
小学生低学年向けの作品です。父母のいない兄弟が、育ての親である祖母を見送る話です。タイトル通り、お通夜の話なのですが、生きることと死ぬことはスタートとゴールではなく、ぐるりとつながって続いていく輪のようなものなんだなと感じました。曹文軒の作品にはこどもが死に出会う場面が多くありますが、悲しいばかりの物語になっていないところが好きな理由の一つです。

この本に収録されています。

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邦訳、『よあけまで』っていいタイトルだなあ。

《荒原茅屋》
私の持っている短編集《甜橙树》では《守夜》のあとに収録されていました。母親の出産の日、弟か妹の誕生を待ちわびる男の子のお話です。この2つを続きで読むとまた新しい感動がありました。

《山羊不吃天堂草》
この作品も上と同じく7-10歳向けとあるのですが、社会格差や貧困問題など、ヘビーなテーマです。子供が主人公でなおさらつらいのですが、こういった社会問題について考える機会になる作品です。

《根鳥》
ある日出会った白い鷹が、少年根鳥に託したのは、谷底に落ちて家に帰れなくなった少女からのSOSが記された布切れでした。彼女の実在を信じ、夢にまであらわれるその峡谷を探すため、長い旅に出る根鳥。11-14才向け、少年の成長の物語ですが、大人が読んでも考えさせられることの多い深い物語です。結末の解釈について、誰かと話したくなります。

《藍花》
こちらも年取った家族の死をこどもが受け止める話です。かつては「泣き女」として名を馳せ、家族のために遠方まで出かけて稼ぎ、豪邸まで建てた女性と、その女性の又孫にあたる女の子との交流が描かれます。せつない話ですが好きな話なので今回短編小説読書会の課題図書にしました。

《草房子》
映画化もされており、曹文軒の作品の中で一番知られています。
桑桑という男の子を中心に、油麻地(香港のではないです)という水と緑の豊かな土地に住むひとたちの姿が描かれます。

全体としてひとつの長編小説なのですが、章ごとに主役が異なり、それぞれが短編小説としても読める体裁になっています。

私は特に杜小康の章が心に残っています。根鳥に通じるものもありますし、自分の父が家族を支えるために働かざるを得なかった子供時代を過ごしたので、重ねて見るからというのもあります。

せつなかったり悲しかったりする中にも思わず笑ってしまうユーモアがちりばめられていて、いい作品だなあとあらためて感じました。