オークワフィナ主演映画『フェアウェル』を観ました



先週観に行った映画『フェアウェル』。
オークワフィナ主演ということで気になっていました。

ガンで余命三ヶ月と宣告された中国のおばあちゃんに会うため、親族の結婚式をでっちあげて中国に戻る家族たち。

オークワフィナ演じる主人公ビリーは、NYに住んでいます。
家賃を滞納していたり、奨学金の不合格通知を受け取ったり、うまくいっていない30歳。
おばあちゃんと電話で頻繁に連絡を取っている彼女、おばあちゃんの病気の話を聞き、ひと目会いに帰りたいのですが、両親から「あんたは感情ダダもれでバレちゃうからダメ」と中国行きを許してもらえません。

反対を押し切って、勝手に戻ってくるビリー。
故郷に戻るのは、6歳の頃中国を離れたきり、彼女にとって今回が初めてです。

家族たちは、おばあちゃんに自分がガンであることを知らせないまま見送ることを決めます。知らせた方がいいと主張するビリーと、「知ってどうするの」と反対する家族たち。

90%中国語の映画

ほとんど予備知識のないまま観たのですが、9割がた中国語の映画でした。残り1割は英語、あと二言三言の日本語。

字幕を観なくてもするする頭に入ってきて、そして中国語と英語のあいだの微妙なニュアンスの違い、オークワフィナのへたな中国語、字幕だけではこぼれ落ちてしまうものをすくえていると感じてよかったです。

家族が集まるふるさとは長春。長春であることはなぜかなかなか明かされず、結婚式当日にようやくわかるのですが、ちょっともっさりした田舎です。北京や上海の中心部のように、キラキラしてなくて、地方都市に住んでいた私にとってはとても懐かしい風景。

地元の人たちが「感じのいいまあまあいいホテル」というのが実際はすごく田舎っぽくて、スタッフがめちゃくちゃ好奇心全開で話しかけてきたり、謎のトラブルが絶えなかったり、隣の部屋の客が水商売の女の人たちを呼び込んでタバコの煙もくもくしてる中で麻雀してたりするのも、すごく既視感があって、ああ、そういう規模の街なんだなというのがわかる。

地味な高層アパートがにょきにょき建ってるのが高速道路から見えたり、街路樹の腰のあたりまで防虫ペンキが白く塗られてたり、私が中国と近い生活をしていたのはもうふた昔も前なのですが、郷愁あふれる映像が盛りだくさんでした。

この映画はルル・ワン監督の実体験に基づいており、彼女自身も6歳で中国を離れ渡米しています。北京に住んでいましたが、実際に長春にも1年間おばあちゃんと一緒に住んだことがあるそう。私が感じるこのなつかしさは、監督自身の視線なのかなと感じました。

映画を観た後でルル・ワン監督について調べたのですが、見た目がオークワフィナとよく似ていてびっくり。

オークワフィナがとにかくよかった

オーシャンズ8、クレイジー・リッチ、ジュマンジ2、オークワフィナが演じた役はどれも大好きなのですが、この映画のビリーは、過去演じた役柄とは違います。

屈託を抱えていて、自分の理想の人生と現実、中国とアメリカ、家族と自分自身、それぞれのはざまで揺れている。

彼女の表情にくぎ付けになっているところで、ピアノを弾いたり走ったりするのを見ると、意外と身体がガッチリしていて、そういうギャップもおもしろいなと思います。

脇役もよかった(ネタバレ)

ビリーのお父さん役はツィ・マー。
ビリーが中国とアメリカの間で揺れるのがよくわかるシーンが多かったけれど、祖国とアメリカ、家族と自身の価値観の間で苦しんでいたのは、むしろビリーの両親です。その葛藤がよく伝わってきました。

結婚式をでっちあげられるハオハオの奥さん、アイコは日本人の水原碧衣が演じています。ご本人は京大法学部→早稲田大法科大学院休学→北京電影学院主席卒業という経歴を持つすごい人ですが、この映画では中国語が全然わからなくておばあちゃんから「あれは鈍い子だ、私は好きじゃない」などと悪口を言われる気の毒な人です。

全然言葉がわからない中で周囲に合わせながらなんとかやっているアイコさん。ああいうシチュエーションって、すごくすごく疲れるはずです。結婚式という一生の大事をでっちあげられ、何日も付き合っているのに、全然嫌な顔をしない彼女はきっとものすごくいい人だし、ハオハオのことがちゃんと好きなんだろうなと思いました。気のよさそうなハオハオが結婚式でめちゃくちゃ飲まされて、おばあちゃんのことが悲しくて泣いてしまうのもよかった。自分たちが主役の結婚式のはずなのに、彼らはこの物語のなかでずっと背景の一部でしかない。考えてみればこのふたりはとばっちりですごくかわいそうな状況なんだけど、家族のためにいろんなものを受け入れ、飲み込んでいるんですね。

オークワフィナが断然物語の中心なんですけど、集まった家族のそれぞれがきちんと描かれていて、そこもこの映画のいいところだと思います。

歌うチワワを披露する年寄りとか、法事の最中ずっとゲームしている子供とか、どちゃくそ飲んでべろんべろんになるお父さんとか、ちょっとしたことで女性間の小さなバトルが始まっちゃう食卓とか、(ああ、そういうのあるよね)と国や文化を超えて共感できるポイントがたくさんあります。

ビリーのお母さんがおばあちゃんの嫌なところを言い出して、ビリーが「今そういうのは関係ない」っていうシーンは、祖父が亡くなる前の母と私の姿そのままだったし、おばあちゃんとビリーが朝、健康体操をするときのふたりの様子、ビリーの表情は、私の母といるときの私の娘そのもので、自分の人生を重ねて泣きそうになりました。

この映画のよさは、そういうところにあるのかなと思います。

思ったのと違う(ネタバレ)

おそらくは評価が分かれる、最後の家庭ビデオみたいなワンシーン。
私もあれを見て拍子抜けしてしまいましたが、じわじわと、あの場面があったからこそのよさを後から実感しました。

告知をするのが正しいとかしないのは間違っているとか、中国の方がいいとかアメリカの方がいいとか、そういうジャッジをする必要はないんだなということ。それぞれにそれぞれのものの見方があって、絶対の正しさはどこにもない。

このところ、自分にはどうしようもないことにまで責任を感じてしまって、どうすればいいかくよくよしていることが多かったのですが、そんな私の心を軽くしてくれる映画でした。

映画のもとになったルル・ワン監督自身が語るThis American Lifeのエピソードはこちら。ほぼ映画のすべてが語られてます。


 

『フェアウェル』公式サイトはこちら。


 
豆瓣のレビューもおもしろかったです。同じように中国を離れてアメリカで暮らしている人たちが、同じような体験をしていることを語っているのも興味深かった。

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