これまで、テレビ出演依頼を何度かいただいたことがあるのですが、お引き受けしたことがありませんでした。ちゃんと人間のことばを話せる自信がなかったので。
このたびは、ラジオということで、声だけなら、超激烈あがり症の私でもなんとかなるであろうか、と、思いきってお引き受けすることにしました。
やらない後悔より、やって後悔!
もしこの世の中にグダグダ会話選手権というものがあれば、地域選抜は余裕で一位通過できる確信があるほど、話すことにかけては自信がないのですが、せっかくのオファーです。プロの皆様のお力を信じて、挑戦してきました。
カフェイン11
参加したのは、ポルノグラフィティ新藤晴一さんのカフェイン11という番組です。
放送局はベイエフエム。
cafein11 カフェイン11
DJ:新藤晴一(ポルノグラフィティ)
ラジオ番組への参加は、これが2度目。
1度目は大学時代。視覚障害のある方向けのボランティア活動関連でちょっとだけお話をしたことがありました。
公開録音スタジオだったのでガラス張りの部屋の中で生放送、生きた心地がしなかったのを覚えています。
今回は、違う意味で心臓がバクバクでした。
目の前にしてお話するお相手は、青春時代からずっと自分の人生とともにある、音楽の作り手です。
人生とともにある音楽
音楽って本当にすごいと思うのは、その断片を耳にしただけで、聞いていた当時の記憶がばーーーっと鮮やかに蘇ってくるときです。
大陸の砂漠のど真ん中をオンボロバスに乗って揺られていたとき、耳に突っ込んだイヤホンから流れていた曲。
その曲を今聞いてみても、それだけで、心はあの場所と時間に戻って、汚れた窓ガラス越しに、青い空と黄色い砂しかない広大な景色を見ています。
(これは前世紀の長旅の記憶。ラインナップは主にスピッツとイエモン、そしてエアロスミスでした。手元には限られた音源しかなくて。留学をともにした精鋭たち。ウォークマンで、手持ちのカセットテープが伸びて擦り切れるくらい繰り返し聞いていました。)
ポルノグラフィティのデビュー時期は、私が留学から帰って、中国語を使って必死で働いていた頃とちょうど重なっていて、だから彼らのあの頃の曲を聞くと、いろんな野望が渦巻いてヒリヒリしていた当時の自分のことを思い出します。
出張で海外に出てテレビをつけると、Channel[V]かなんかで彼らの曲が流れてきて、ふいに飛び込んでくる日本語に「おっ!」と思って、テレビ画面に見入りました。香港か台湾で買った中国語繁体字版のお勝手ベスト盤もいまだに手元にあります。色情涂鴉。
結婚は、迷わなかったけれど、そのためにまっすぐにキャリアを積んでいくことができなくなったことには動揺したのでした。何か大切なものをもぎ取って行かれたようでした。
不妊治療を始めて、いい結果が出なくて何度もがっかりし、思い悩んでもしかたのないことをぐるぐる考えていた、あの頃もまた、仕事が忙しかった時期とは別の意味で、いつもヒリヒリしていました。
日本のアーティストのCDはあまり買わない私だったけれど、上の子が生まれた年に出た、彼らの赤と青のベスト盤は買いました(今では子供が熱心に聞いている)。
そんなふうに、私の心に、人生に、その当時聞いていた音楽というのはがっちりと根を下ろしているものです。きっとこれから先も枯れることはないでしょう。
閑話休題。
そんなこんなで、行ってきました、ラジオ収録。
予想通り、なかなか思ったようにはいかず、思い出すだけで、恥ずかしさのあまり布団にもぐってワーーーーッと叫びたいような気持になりますが、それでもきっと、晴一さん、スタッフのみなさまのお力でなんとかなっているといいなあと祈っております。
テーマとしては、バレットジャーナル、そして語学のことをお話するということでしたが、予想していた以上に晴一さんがバレットジャーナルのことをご存知で、ノートも日常的に活用されている様子だったので、緊張しつつもテンションは爆アガリになりました。ノートを見せてもらったあたりが興奮MAXで、何を話したか覚えていない始末です。
うまく答えられなかった質問もいくつかあって、どうしようーとテンパっていると、みなさんが助けてくださったのも印象的でした。
私は本の原稿を書くのも、翻訳業務も、どちらも文字の仕事ということもあって、とっさの機転がきくタイプではありません。
何度も考え、推敲して、じっくり考えて決めていく。
でも、ラジオの現場はすべてが瞬時に決められていきます。迷っているヒマがない。
流れを読み、笑い声で盛りたて、会話が滞ればよどみをつついていい流れのある場所に戻し、写真が必要であれば即座に材料を集め、オープンにしていいものかどうかを即断し…。
ぼんやり者の私はただただ呆然と、みなさんの素晴らしい仕事ぶりを見て、すごいなあ、プロの仕事ってこういうものだなあ、と感動しているだけでした。あらためて、このような機会をくださったみなさまに感謝です。
そして受け継がれる
この文章は、放送後に公開しようと思って書いております。
番組を聞いてこのブログを見に来てくださった方はご存知かと思いますが、私からのリクエスト曲は、うちの中2の男の子に権利を譲り、『Mugen』となりました。(本当は「アポロかサウダージかMugen」と言っていたので、ご希望の曲が2曲かかったことになります)
リップサービスではもちろんなく、14歳の男の子はただいまポルノグラフィティの曲が大好きで、毎日Alexaに命令して曲をかけさせ、楽しそうに口ずさんでいます。(ちなみに私の時代のものだとほかに、スピッツとブルーハーツが大好き。)
うちの押し入れからCDを引っ張り出してきたのは、Alexaにリクエストしはじめてからもう少しあとなので、どこか別のルートで発見してきた模様です。YouTubeかなあ。やっぱりYouTubeなんだろうなあ。
自分が生まれる前の曲を自分で見つけてきて、こうしていろんな時代の音楽をわけへだてなく楽しんでいるのを見ると、すごいなあデジタルネイティブ、と感心してしまいます。
最近反抗期でなかなか素直に会話してくれない中学生男子ですが、今回のラジオ番組へのゲスト出演をきっかけに会話が生まれ、「おかあさんすごい」と見直してもらえています。ありがたいことです。
収録を終えて家に帰り、「やっぱり『Century Lovers』をリクエストすればよかった」と言う彼と一緒に、リビングで大きな声でポルノグラフィティの曲を歌いまくり、夫に「うるさいよ」と叱られています。
平和な日々に感謝です。
ポルノの歌を聞くたびによみがえっていた、あのヒリヒリしていた若き日の記憶は、こうして幸せな思い出に上書きされていくのかもしれません。
放送後
(今放送を聞きおわり、恥ずかしさで汗だくです。おうちにおりました。オープニングで収録って言ってたから大丈夫ですよね?)
息子と一緒に聞いておりました、ふふふ。
祖父の日記とか、無駄な情報を放り込んでしまってすみません。もっと晴一さんのノートについて突撃すべきでした。錯乱状態でしたので、お許しください。
曲先だからメモはしない、のくだりは本当にびっくりして変な声しか出していませんでした。
そうか、あの言葉たちは天からおりてくるのか、すごい才能だな、という感動が詰まった「ほえ~」でした。
お話しているときはいっぱいいっぱいでしたが、オンエアを聞いていると、晴一さんはほんとうにキュートでチャーミングな方だなと実感しています。そして頭の回転が速く、語彙をたくさんお持ちで、話術が巧み。
聞いてくださったみなさん、ありがとうございました。
(せっかくなので、「おでんを仕込む」ページをどうぞ。)
ロイヒトトゥルム・ドット方眼・A6・2019年新色パシフィックグリーン