アウトライナーの上の人生



ごりゅごさんとTak.さんの対談を聞きながら、バレットジャーナルにからめ、思い浮かんだいろんなことを書きとめます。

ごりゅごさんの問いが絶妙ということもあるでしょうが、Tak.さんの本を読んだときとは違う気づきがたくさんありました。

アウトライナーを操作するように思考する

Tak.さんが、「別にこれはアウトライナーじゃなくてもやってるひとはいるでしょうけど」と言われているように、私たちは意識せずとも頭の中で、今手持ちの条件を組み合わせたり組み替えたりしながら、新しい考えを生み出し続けています

こういうふうに言うと、小難しくなりますが、たとえば料理の話。

平日の夕方、電車の中で、冷蔵庫とストック棚の中にあるものを思い浮かべます。

・キャベツ
・豚肉
・牛肉
・厚揚げ
・さばのみりん干し
・大根
・長芋

この食材でできそうな料理が何パターンか出てきます。
脳内で料理ごとに食材がグルーピングされます。

回鍋肉が上位にあがってきました。

が、ここで、

・常備菜がレンコンのきんぴらと白菜の浅漬け
・自分の体調があっさりめのものを欲している
・疲れてるから魚焼きグリル使いたくない
・疲れてるから大根おろしは却下

という条件から、候補のうち、牛肉と厚揚げと大根の炒め煮を採用します。

今日のおかずが決定した時点で、バックグラウンドでは、残り物を戦力とした弁当献立、そして回鍋肉もしくは焼き魚をメインとした明日の夕食メニューがぼんやり計画され始めています。

頭の中だけでの組み立て・組み換えで十分な人もいれば、私のようにこれらをバレットジャーナルに全部または一部出力したほうがうまくいく人もいます。

あらかじめ1週間の献立を決めて買い物から料理まできっちり計画・実行できる人にも、予定外の出来事は起こります。

突然実家やお友達から送られてきた、たくさんの食材。

やはり同じように条件の追加と組み替え、再計画が必要になります。

こういう「生活」レベルの情報処理を、「人生」でも同じようにやっているんですね。

アウトライナーで予定外のできごとを制御していく

人生レベルでのこうした脳内での情報処理を、私は以前は「カード」に例えていました。

人生の変化に対応していくためのカード

結婚・出産に加え、夫の数年おきの転勤に対応するため、結婚後は正社員という働き方を諦めざるを得ませんでした。

実家や夫を頼ることもできず、あまり恵まれているとはいえない環境の中、育児をしながら働くことを続けてきました。フリーランスをしてみたり、パートで働いてみたり、在宅業務と職場勤務とを掛け持ちしたり、いろいろな形を試しました。

転勤族の妻になった時点で、行った先々での職探しというのが継続的な課題になることは予想できていました。 妊娠するまでは、翻訳や通訳の仕事を個...

自分の置かれた環境や持っている技能をカードでイメージして、「自分の持っているカードをどう掛け合わせていくか」をここ20年近くずっと考え続けています。

脳内で思考するときのイメージもカードの組み換えでした。
カードを表に向けて重ならないように広げて、その中からうまい組み合わせを考える感じ。
新しいアイデアがほしいときにするのは、シェイクではなくてシャッフル。

Tak.さんのインタビューを聞いていると、アウトライナーでもカードでも、やっていることは一緒だったのかなと思いました。

グルーピングして組み替えて、決まったと思ったら予定外のモノが入ってきて。
あれこれやっているうちに、次の手が見つかると同時に、上位に置くべき何かも見つかる。

「その上にあるもの」の発見

インタビューの中でごりゅごさんも言及されていた、「奥さんと美味しいものを食べに行く」という項目の上位に置くべき項目の発見。

似たようなことが私にもあって、例えば、

・子供が大きくなったら正社員の職を見つける。絶対に。

というウィッシュリストの項目がありました。

その項目の上位というか、そのウィッシュリストが実現することで得られるもの、得たいものは、

・安定した生活、収入

だと考えていました。

ですが、正社員の求人情報を追いかけて、面接なども受けているうちに、自分が「正社員になりたい!」と思うのは、これまでパートで働いているときに受けた理不尽な仕打ちをもう受けたくないから、ということに気づきました。

「正社員」へのこだわりの上位には、

・非正規の身分で働いていた時に、非正規ゆえに受けた理不尽さを、もう味わわずに働きたい。

という気持ちがあったのですが、正社員になったからと言って、同じような目に遭わないかと言えば、きっとそうではない。

もっと別の条件のものさしでもって、働く先を選んでいかなければならない、と気づきました。

実は一度失敗してしまい、入社後すぐに辞めることになったのですが、あの時、「正社員」にこだわって働き続けなくてよかったと思っています。

目標が正しいとは限らない

中国語を学ぶ過程で、自分は外国語を学んだり使ったりすることが好きだと実感することになりました。

20代の頃、「そういった人が目指すのは、通訳しかない」という思い込みがありました。
フリーランスで、バリバリ稼ぐ通訳さんのイメージです。

勤めた会社で通訳をする機会もあったせいで、トレーニングを積んでいけば、そこにたどり着けるし、そこに到達するべきなのだと思っていました。

迷いなく進む一時期を経て、ある時はっと気づきました。

私の目標はそこじゃない。

それに気づかせてくれたのは、ノートに残したいろんな記録です。

「生活」のなかでの小さな記録、一見関係のなさそうな別のモノどうしが、シャッフルし、シェイクしながら意外なつながりを持っていくことで、「人生」へも影響していく。

生活と人生をリンクしていく

インタビューの中で出てきた「アウトライナーは生活と人生をリンクしていくためのもの」というTak.さんの言葉は、まさに私にとってのノートを表す言葉と同じです。

バレットジャーナルについて書くときに、私は「暮らし」ということばを好んで使うのですが、それは、「暮らし」という言葉が「生活」と「人生」をつなぐ位置にあると感じているからです。

「生活」という言葉よりももう少し上位にあり、「人生」という言葉よりももう少し日々に寄り添っている。

そういうこともあり、生活と人生を内包する「LIFE」というワードにフォーカスしたTak.さんの本には、共感すると同時に、不思議なつながりも感じました。

手帳というツールを、単なる予定メモやTo-doリストだけで終わらせない使い方。
手帳ユーザーにとっても、ヒントがたくさんつまっている本です。