このところ、発達障害やHSP(Highly Sensitive Person)についての本がたくさん出てきているのを観測しています。
私自身、なんだかうまく周囲にとけこめない自分を持て余し、多方面で生きづらさを感じつつ、どうにかこうにか生きてきました。
自分の性質の中でいちばん嫌いでやっかいだなと感じるのが、「できない理由探し」です。
小学生の頃、体育が嫌いで、できない理由を探してはさぼっていました。
ほんとにつらくて自分をさいなむものからは全力で逃げていいと思うけれど、あの頃の私は結構かんたんに逃げていた。
理由を見つけては、その理由を免罪符というか黄門様の印籠みたいに振りかざして、その対象からも自分自身からも逃げていたのです。
そういうわけで、自分に言い訳をたんまり与えてくれるこの手の本には、あまり近づかないようにしていました。
HSP、敏感すぎる人
HSP(Highly Sensitive Person)と、そうでない人という分類は確かにあるだろうと、普段の生活から確信を持って言えます。
背が高かったり低かったり、足が早かったり遅かったり、そういう身体的性質と同じように、メンタル面でも個人でもともと持っている特性の違いはあるはずです。備わっていないものをことさらにアピールして、できない言い訳にするのはかっこよくない。もっているものでやっていくしかしかたない。
大人になってからはそんなふうに考えて、せいいっぱい、「気にしない人」に擬態していました。
気にしすぎることは悪いことだとも思っていたかもしれません。
嫌われたくなくて、「嫌い」と思うことさえ悪いことのように封じていたところもあります。
「人の悪いところではなく、いいところを見なくては」と思い、嫌いな人にも、自分を雑に扱う人にも愛想よくふるまうことで、自分がランクアップしたかのような幻想を抱いていました。
「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本
気にしすぎな性格のために疲れることもある一方、年齢を重ねたおかげか、自分がどう見られるか(こう見られたい)という執着から少しずつ解放されてきました。
そんなところにふと目にしたこの本。
「まわりに機嫌悪い人がいるだけで緊張する」「相手が気を悪すると思うと断れない」「疲れやすく、ストレスが体調に出やすい」「細かいところまで気づいてしまい、仕事に時間がかかる」そんな「繊細さん」たちから、「人間関係も仕事もラクになった!」と大評判。予約殺到の「HSP(とても敏感な人)専門カウンセラー」が教える初めての本!
高評価のレビューがたくさんついているのは飾りではなく、本当に心が休まる本、それでいて、「繊細さん」であることを振りかざして言い訳にすることを封じるような、現実的な対処法がたくさん紹介されている本でした。
非・繊細さんへの対応法
近くにいる「非・繊細さん」の無神経さにイライラし、相手のことをひどい人だ!と心の中で責めてしまいます。
これ、よく気がつく繊細さんにありがちではないのかと思います。
相手への嫌悪感と、「私ならそんなこと絶対にしない!」という正義感のようなものと、でも(人を嫌ってはいけない)という自分に課したルールの中でがんじがらめになり、余計にストレスがたまっていく。
この本の中では職場における対処法が多く載っているのですが、それがいちいち(ああ!あるある!そうすればよいのか!)と腑に落ちました。
「気がつかない人」に対して感じる、怒りを帯びた(なんで?)という気持ちは、ひっくり返すと、「気がつかない人」も「気がつく人」にそう感じているはずです。お互い様精神で切り抜けられることも多そうです。
また、全方位、全ジャンルにおいて繊細である人は少なくて、誰にも「このジャンルで、より気にしがち」な偏りがあると思います。繊細さんであっても、ある状況では「非・繊細さん」になることもありうる。
繊細さんは他人を気遣い、いろんなことに気づきすぎるあまりに、心が狭くなってしまいがちなのも事実なんだろうなと感じました。本の中にこうした厳しい言葉はないのですが、読んでいると、やさしい言葉でこういう点についても指摘されている気がします。
この本は、私が遠ざけたい「自分自身と向かいあわずにすむ言い訳をくれる本」ではなく、どちらかというとその反対の本でした。
自分を傷つける言動をする人から自分を守ろうとするあまり、かえって自分で自分を傷つけてしまう、そんな「繊細さん」の助けになってくれると思います。