Lucy Raven: Murderers Barを観た@バンクーバー美術館

バンクーバー美術館(Vancouver Art Gallery)で観た映像作品が強く心に残っているので、記録しておきます。

Murderers Bar

Murderers Barは、Lucy Ravenによる、アメリカの歴史と自然環境の変化をテーマにした、力強い映像インスタレーション作品です。

カリフォルニア州北部のKlamath川にあった巨大なコンクリートダムの撤去。
これは、アメリカ史上最大のダム撤去プロジェクトで、川の生態系を回復するための大規模な取り組みの一部となります。

ダム撤去のニュース映像をYouTubeでも見ることができます。

この撤去の様子をダイナミックな空撮により制作された作品…といったことを全く知らぬまま、美術館の一室で、縦長の大きなスクリーンの前に階段状に設置された座席に、どれどれと腰掛けたわけですが。

映像からまず受けるのは、すさまじいエネルギーのほとばしり。

そのエネルギーとは、巨大ダム撤去のため人間が仕掛けたダイナマイトの爆風であり、人間が百年単位で加えた変化すら砂浜の落書きのように一瞬にしてかき消してしまう自然の力の底知れなさであり、それらを追ってすべてをカメラに収めようとするアーティストの執念であり。

40分超と、長めの作品だったからか、全編を通しで観たのは、あの時間、私しかいなかったのがもったいないなあと思いました。飽きることなく没入しておりました。

縦長のスクリーンに映る壮大な光景と、はらわたに響く轟音をからだで受け止める映像体験、すごかったです。(音響がすごくよかった。クアドラフォニックサウンドというらしい)

アメリカ西部の歴史や自然、デジタルとアナログの融合、政治的な問題、破壊と再生、そして人間と自然の関係性など、たくさんのテーマを内包している作品です。(あとからググっていっしょうけんめい映像の解説を読みました。)

アーティストが作品にこめたテーマとはきっと全然違うんだけれど、私はあれを観たあとから、あのごうごうと音を立ててひたすらに進む奔流を自分のからだと心の中に得た気がしています。

感想ツイートの記録

歳を重ねて、薄目をつむって流そうと思えば流せるできごとのサイズ感が増してきたよね。自分の中になんでも浮かべて流して大海のかなたに送れる大河が存在しているってすごいことだよね。それは時間が私に贈ってくれた、人生をかがやかせるパワー

みんなもね、自分の心に流れる雄大な大河をイメージしておくといいよ。「水に流す」ってトイレのボタンみたいなケチなやつじゃなくて、清らかで向こう岸が遠くて果て無いダイナミックな川に流すこと。流すものにも美醜の区別はなくて、ただただ大自然の営みのひとつにすぎない

大河を遡れば、白波立てて轟々と流れる急流もあるし
流しちゃえ流しちゃえ

芸術ってほんとうにすごい。人生にちからをくれる。

Lucy Ravenは1977年生まれ。私と同世代。

Lucy Raven: Murderers Bar
The Vancouver Art Gallery is recognized as one of North America’s most respected and innovative visual arts institutions...

バンクーバー美術館での展示は終了しましたが、11月からトロントのThe Power Plant Contemporary Art Galleryでの展示が始まるそうです。

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