出たら中身も見ずにすぐ買おうと決めていた、アスク出版の「中国語検定 準1級・1級トレーニングブック リスニング問題編」。
2020/2/28に発売されました。
このシリーズは、各級別に出ていて、自分で教えるのにも、法人語学研修コーディネーターをしていたときにも積極的に採用していました。
各級ごとに家にも揃っているし、準1級・1級トレーニングブック筆記問題編に限っては2冊持ってます(はやく1級合格しろ)。
既刊の筆記問題編も、新しく出たリスニング問題編も、このレベルは1冊3960円となかなかお高いテキストになっています。
本屋さんに行ってなかみを確認することもできない状況ですので、レビューをお送りしてみたいと思います!
購入を検討されている方の参考になれば!
テキストの構成
Amazon商品ページの目次紹介ページより。
STEP1 練習1~練習24(設問5問+書き取り3問)
STEP2 準1級模擬試験
1級
STEP1 練習1~練習16(設問5問+書き取り3問)
STEP2 1級模擬試験
二次試験について
参考資料集(IT・モバイル関連用語、インターネット等でよく使われている言葉、有名企業・ブランド、経済・社会関連用語、世界・中国の文学その他、中国の伝統文化・芸術、中国の神話と神々、化学・天文学・歴史学等の関連用語、病気と諸症状・健康、スポーツ、動物、世界的大学、世界的に有名な観光地、飲み物・食べ物、数字を含む四字成語、中国と世界の「〇大~~」ほか、日本語のカタカナ語)
本問の語句・関連情報索引
各コンテンツのレビューは後述します。
音声データ
総収録時間が9時間超の音声データを利用することができます。
リスニング対策テキストなので、この圧倒的なボリュームはとてもありがたい。
音声データの入ったCDがテキストに付属していますが、こちらは通常の音楽CDタイプではないので、一般的なCDプレーヤーでは再生できません。
MP3ファイルが再生できるCDプレーヤーか、CDドライブのあるパソコンで使うことができます。
付属CDを使わない方法はふたつ。
ひとつめは、出版社サイトからダウンロード。
もうひとつは、オーディオブックを聞くアプリ、audiobook.jp!経由で、スマホに直接ダウンロード。
どちらも出版社サイトに説明があります。
トラックが細かく分かれていて、わかりやすくタイトルをつけられているのは使いやすい。
audiobook.jp!では、速度変更も0.1刻みで変えられます。
お気に入りの語学再生プレーヤーアプリがある方は、いったん出版社サイトから音声データをダウンロードして、アプリから呼び出すとよいです。
二次試験の実施概要
二次試験の実施概要および準1級の体験談が掲載されています。
残念なことに、1級の体験談の掲載はありません。現在募集中とのこと。いずれ改訂版または出版社サイトにて読めるかもしれません。
二次試験情報を期待していましたが、期待していたほどのボリュームはありませんでした。準1級であればネットの方がたくさん見つかります。
巻末付録
付録として、企業名や新語などを集めた用語集が掲載されています。
辞書には載っていないものが多いので、ここは筆記問題の日文中訳にも役立つかもしれません。
学習補助ドキュメント
このほか、アスク出版社のサイトにて、学習補助ドキュメントが公開されています。
このテキストの場合は、リスニング原稿をピンインのみで表記したドキュメントが提供されています。これが本当にありがたい。
音声データを聞いて、わからないところを確認するためにスクリプトを見て、それで終わってしまいがちです。音声を全部ディクテーションすれば、聞こえていないところがあぶり出されますが、すべての音声教材をディクテーションするには人生は短すぎる。
そこでピンイン表記のドキュメントです。
ピンインのみで書かれたスクリプトを漢字に戻していきます。
これも面倒ですが、音声データを数秒ごとに止めながら書き取りしていくよりははるかに速い。
漢字で書かれたスクリプトをざっと確認しただけでは見つけられない、「読んでわかるけど聞いてわからない語彙」を発見できます。また、「読めるし聞き取れるけど書けない語彙」にも気づけます。これは書き取り問題に有効。完全に知らない語彙で点を落とすより、絶対知ってるのに書けなくて点数を落とすほうがショックです。こまめに漢字を書く練習をするべし。
なかみ(音声部分)について
一時期TOEIC学習にのめりこんでいたこともあり、試験対策テキストでは、音声部分がいかに本番のものに近づけられているか、というところに注目するようになりました。
この点から言うと、このテキストの選択肢を読む女声が、本番のものとタイプが違うのがとても気になります。
きれいな発音なのですが、ふわっとしていて、中検の音声と比べると違和感があるのです。
手元に2008年~2017年の過去問が数冊あるのですが、どれも、おなかに力がこもっている感じのはっきりした声です。
アスク出版の他の級の対策本はどうなっているかなと確かめてみましたが、2級は男性女性とも本番音声に似たくっきりした声です。
この点が残念でした。模擬試験も各級に1回分ついていますが、がっつり対策をしたい方は、最低1冊は過去問題集を買って、本番の声に慣れておくといいと思います。
なかみ(問題部分)について
準1級、1級とも、リスニングは ①聴解問題 ②書き取り問題 の2種類です。
本番では、聴解10問(長文2題)、書き取り5問(長文1題)、それぞれ異なる文章ですが、このテキストでは、同じ長文で聴解と書き取りを行います。
この構成だと、聴解を解いた時点で書き取り問題の内容を聞いてしまうことになり、本番と同じように解くことができないのが残念です。
特に1級は、聴解2問を必死で解いた後、集中力が切れそうな状態で新たに書き取り問題に取り組まなければならないので、気力勝負というところもあります。こちらも、一度は過去問を解いて、本番の感じをつかんでおいた方がよさそうです。
とはいえ、練習問題としては、準1級24題、1級16題と、十分なボリュームです。(1年分の過去問題集には、準1級と1級あわせて聴解8題、書き取り4題)
同じシリーズの筆記問題編では、このテキストから同じ語彙が本番に多く出ていることもあり、特に書き取り問題に効果があることを期待しつつ、全文書き取ってしまうつもりで取り組むのがよいと思います。
なかみ(解説部分)について
中検リスニング問題(準1級・1級)を解いたことがある方はご存知でしょうが、リスニング問題の問題用紙はまっさらで、選択肢などの記載はありません。
長文聴解は内容だけでなく選択肢も読み上げです。
したがってテキストのページ数は、そのほとんどが音声のスクリプトとその訳・解説に割かれています。
長文聴解は本文の理解はもちろんですが、聞かれていることと選択肢の意味をしっかり取れているかどうかで合否が分かれてしまいます。本文の復習はもちろん、問題文と選択肢が瞬時に理解できるか、できていない場合は、なぜできなかったかの理由を探ります。
準1級より上の問題は、筆記試験もそうなのですが、「え、なんでこっちが正解なの」と悩むような、すごく微妙なラインの問題が必ずひとつ以上あります。言われてみれば確かにそうだけれど、微妙だなあ、と感じてしまうような問題です。読解力を上げることも必要ですが、このタイプのひっかけ問題に慣れるのもひとつの手です。
特に1級は1年に1度しか実施されず、過去問の数自体が少ないので、このテキストの圧倒的な問題数の多さは強みだと思います。
解説部分には、リスニング原稿・日本語訳、設問原稿・日本語訳のほかに、重要語句をピックアップしてまとめてあります。
また、関連情報として、語句の紹介があり、つながりのある語彙を芋づる式に覚えられます。
こぼれ話として、ことわざの由来や文法解説など、読み物としておもしろいコラムが各問題の解説のあとについています。
以上、唯一の中検1級対策テキスト『中国語検定 準1級・1級トレーニングブック リスニング問題編』のレビューでした!
consもいくつかとりあげましたが、prosもりだくさん、存在自体がありがたいテキストです。