The Things We Never Say エリザベス・ストラウト 読み終わりました

エリザベス・ストラウトのThe Things We Never Sayを読み終わりました。

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57歳のArtie Dam、高校で歴史を教えている教師が主人公の物語です。
これまでのストラウトのどの作品よりも、孤独感や重苦しさを感じました。

感想

タイトルの通り、さまざまな「誰にも言わないこと」のエピソードが積み重ねられ、幸福感にひたったり、うちのめされたり。

息子Robとの関係、教え子たちとの胸を打つエピソード、いちばん近いはずなのに遠く感じる妻Evie。

主人公の周りのひとたちにも感情移入してしまいます。これがストラウト作品の素敵なところ。

読者には何の前触れもなく、少し未来のできごとがカッコ書きで明かされるのにも、心を揺さぶられてしまいます。

2024年のアメリカ大統領選挙が物語の背景になっているのですが、政治的な不穏さと、Artieの心が不安定に揺れるのが重なります。そのあやうさは今の日本の現状でもあり…、読んでいて鬱々としてしまいました。

とはいえ、序盤にオリーブ・キタリッジが主人公らしい小説が登場したり、ストラウト作品らしい抑えめのユーモアもあるのですが。

内容に触れます(タップで開く)

二極化と分断。刻々と自分の生活のなかにしのびこんでくる。
良識が通じなくなりつつある社会の中で、きらりと輝く人の善性。

“He understood it; his country was committing suicide”

国がみずから進んで破滅の道を歩もうとしているのを、目撃するArtieの苦悩は今の私にもつながっているなと感じます。

そして秘密。

あらゆるところに「The Things We Never Say」がちりばめられていて、なんでも思ったことを口に出してしまう私にとっては、めまいがしそうでした。
言わなくていいことを言ってしまうRobにとても共感してしまった。

Dam先生に自分の思いを打ち明けたことでそれまでは気づくことのなかった自分の将来の夢に出会うことができたDanny。
家庭内のできごとを思わずお客のバスルームでぶちまけ泣いてしまうDannyの父。
セラピストなのに、いらんことを口走って夫婦で傷つけあってしまう妻Evie、そしてFlossieの打ち明け話…。

EvieにRobの実の父親について知っていることを、結局打ち明けなかったArtie。彼をこわしてしまったのはやっぱりこれだと思う。Robは母親にぶつければよかったんだよ。

かけがえのない理解者となったRobとその妻がアメリカを去ったっていうのも、親友と思って信頼していた心の支えの命の恩人が実はMAGAだったっていうのも、信頼していた校長が不法移民をかくまったことでつかまった(んだっけ?)上に自殺してしまったっていうのも。そうだ、万引きを「言わなかった」店主の死もあった。

物語としては終盤になってたてつづけに悲劇が起こってつらいんだけれども、

それでもじわじわと温かいものが心を満たすのが、ストラウトの書く物語が好きな理由だと思う。
エピローグがうつくしくて、読み終わってしばらくぼんやりしてしまいました。

こんな時代に生きる私たち。

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