《把你的英语用起来!》
「何年もほったらかしていたあなたの英語を生き返らせよう!」
「『こんなに長い間勉強したのに英語がちっともわからない』の呪いを解こう!」
2013年の6月に発売されて以来、圧倒的な支持を受けている中国の英語学習指南書です。
詰め込み型の学習書を捨て、この本にあるとおりに学習を進めよう、と、リンク先の中国アマゾンや各種書評サイトには熱いレビューがたくさん投稿されています。
どんなメソッドか気になり、Kindle版を読んでみました。
内容について
学習法の中心に据えられているのは、クラッシェン博士の「i+1」自分の実力より少し上のものを大量に読む、という理論です。
具体的にどのような教材を使ってどのくらい時間を使い学習を進めればいいかが丁寧に書かれています。
メソッドとしては、森沢氏の「英語上達完全マップ」と共通点がたくさんあります。回数を指定しているところもよく似ています。
発音その1
まずは発音から。
長いあいだラジオ英語講座を担当していた赖世雄というカリスマ英語講師によるテキストが推薦されています。確かに発音は、同じ母語の先生に習った方が痒いところに手が届きそうです。
ちなみに私が使った発音の教材はこちら。まだまだ満足なレベルとは言い難いですが、この2冊でかなりリスニングが楽になりました。
ESLPod
発音の次は、ESLPODの活用法が詳しく書かれています。
ESLPODは無料で聞けるPodcastですが、有料で販売されている教材のうちの6冊が紹介されています。
Introduction to the United States
English for Business Meetings
Interview Questions Answered
Using English at Work
A Day in the Life of Jeff (a Man)
A Day in the Life of Lucy (a Woman)
有料販売だけあって、すべてのスクリプトや単語の説明がきちんとまとまってPDFでついてくるので、使いやすい。
急いでやり終えることもできるけれど、きちんと効果を出そうと思ったら、3冊やり終えるのに3~4ヶ月はみたほうがいいとアドバイスされています。
音読&録音のやりかた
まず2〜3日でテキスト一冊ぶんの音声をテキストを見ずにじっくり聞く。わからない部分はノートにメモ。次の3〜4日でテキストを読み、しっかり語句を把握する。それから音読練習を始める。音読の種類はみっつ。
①本を見ずにセンテンスごとポーズ、その間にリピートする。できなかったら繰り返す。
②本を見ながら一時停止せずにシャドウイング。
③本を見ず、一時停止せずにシャドウイング。
①は一課を15分くらいかけて完成させ、②を6〜7回、③を3〜4回、が目安。
そして復習がなによりも大事。
本の冒頭で、エビングハウスの忘却曲線の説明があり、それにそって次に復習しなければならない日にちが自動表示されるExcelの表を作るように指示があります。
その日新しいことをする前に、表を見て、復習しなければならない課の音読をせよと。
Excelの表、作ってみました。エビングハウス・復習表
1・2・4・7・14・30・60日と列を作りましたが、不要なところは削除してもよいかも。
本の中では1・4・7・14・30日と設定されています。
学習日のところに、やった日の日付を入れると、自動的に復習する日が表示されます。
Excelをお持ちでない方は、OpenOfficeというフリーのソフトを利用することができますよ。
上記の一連の練習に一区切りついたら、スピードが遅いスキットの音声をカットします。
スクリプトを見ながら音読し、自分の音読を録音してみます。
原音スキットと自分の音読録音をモバイル端末に入れて、スキマ時間に聞き比べる。
9回聞いたら違いがはっきりわかってくる。
どこが違うかをはっきり認識した上で、改めて録音し直す。また9回聞き比べる。それを繰り返して(2〜3日後、とある)もういいかなと思ったら次の課へ進む。
こんな感じでビジネスジャンルの三冊だったら三ヶ月くらいで終われるでしょうとのこと。
「最初のシャドウイングの時点で挫折感を味わうでしょう、でもそこで歯を食いしばって続ければ、次の課には少し学習速度が上がってくる。最初の一冊に一月半かかっても、次の一冊は半月で終われるかもしれない。」
「毎日2時間、三ヶ月やればスムーズになってくる、そしたら次の中上級レベルへ進む。」
この種のトレーニングには、語学プレーヤーアプリ、Speaterが本当に便利。使い方は過去記事で紹介してます。
Speater(曲/動画 ABリピート – 歌/音楽/動画/映画/ビデオ) 1.3.0
分類: 教育,ミュージック 価格: ¥250 (Sungyoon)
このESLPodのトレーニングの後は、再び発音。今度はAPWが紹介されています。
[the_ad id=”16803″]「ESLPOD練習をすることで自信がついたかもしれないが、VOA StandardやBBCニュースを聞くとそのあまりの速さについていけず、がっくりするかもしれない。
欲を出してシットコム見て笑ってわかった気になっても、字幕なしにはちんぷんかんぷんだろう、オーディオブックなど子守唄にしかならない」と、私も心当たりがあることがたくさん並んでいます。
APWで発音の練習をした後は、EnglishPodという中国産のPodcastがオススメされています。それも、現行のではなく、Marcoがいた頃の、という指定付き。
当時同じところから出てたChinesePodをよく聞いていたので、こちらも聞いたことがある気がするのですが、あまり覚えていません。
やり方が興味深いので、こちらもついでにメモしておきます。
EnglishPodの活用法
①始める時点で、VOAのゆっくりのが問題ないくらいのレベルに達していることが前提。
②進め方の計画をたてる。毎日何課、どう復習するか
③まず内容を聞く。聞き取れたと思えばOK
④約1分のスキットを9回程度聞く。
⑤続いてシャドウイング。スクリプトを見ながら3〜4回、次はスクリプトを見ずに9回一気に。
⑥説明部分ではメモを取り、学んだ単語などはスキマ時間に覚える。
これが一課の基本練習です。
追加練習として、一週間に聞いたレッスンのうち一番好きなスキットをひとつ選び、音読を録音、そして前のように、繰り返し聴き比べて満足するまで録音してみる。
EnglishPodは全365回あるらしいのですが(確か)、そのうち100回分くらいこの基本練習プラスαをやれば次のステップにいって大丈夫だよ(^_-) と書いてあります。果てしないですね…
発音その2
それからまた発音。今度はAATをオススメ。前からこのテキストのこと、聞いたことはあったのですが、今回俄然興味を持ちました。
先日調べた時は、旧版ばかりヒットして、てっきり買えないものだと思い、中国版を注文しましたが、新版がふつうに買えるみたいです、失敗した…
AATのあとは、原書やオーディオブック、ニュースやウェブを使っての学習法で、本の残り半分が埋められています。おすすめ原書が微妙に日本で人気があるものとずれがあって、違いが面白いです。
Kindleの力を借りて原書を読んでるものの、私のレベルはまだこの本の半分までもたどりついてない状態だなあと実感しました。
今回何冊か中国の英語学習本を読んで感じたのは、日本人だけが英語に向いてないわけじゃない、単にやりようが足りないだけなんじゃないかということです。特に口を使ってのトレーニングが圧倒的に足りてなさそう。
他国の学習者の勉強法を参考にする
以前、韓国でベストセラーになった英語学習法についての本が、日本でも話題になりましたが、こんなふうに、他の国の人たちは英語をどんなふうに勉強しているのかを知るのもおもしろいなと感じました。
英語は絶対、勉強するな!―学校行かない・お金かけない・だけどペラペラ (サンマーク文庫)
《把你的英语用起来!》では、後半80%すぎてからようやく、会話実践の方法が紹介されます。
その会話練習法がいかにも中国らしいのです。
「家族や友人と話すときに1~2文でもいいから英語で話す」とか、
「微信(中国版LINE的なサービス)を使って英語で音声チャットする」などという提案が。
この「英語で音声チャット」は、ネイティブとの交流ではなく、おそらく中国人同士での練習のことなのです。百度検索すると、英語で会話グループ・メンバー募集的なものがたくさん見つかります。
本の最初に「中国人的性格普遍内敛,更是不敢开口(中国人はなべて気持ちを外に表さず、(英語を)話す勇気が出せない)」とありますが、一瞬読み間違えたかと思いました。中国人が話す勇気を持っていないのなら、日本人はどう形容すればいいのか…貝…?
日本人同士で外国語会話練習するのに積極的な日本人って、あんまり見たことがありません。私自身も多分そう。オンライン英会話が日本で流行る理由がわかった気がしました。
留学中に仲良くしていた日本語学科の中国人学生は、会話練習は学年越えた学科の学生が集まって、ひたすらその時間日本語だけで話す、というのをやっているといっていました。この学習法が彼らにとってはふつうのことのようでした。大学3年生になりたて、国外に出たこともないのに、彼女はすでに日本語ペラペラでした。
当然といえば当然なのですが、オンライン会話を活用しよう、という章はこの本にありません。一般的な中国の学生にとっては、日本人にとっては格安と言われているフィリピン英会話の授業料も決して安いものではないということもあるでしょう。
英語を話せるようになるために、外国人との会話練習は必要条件ではないんだなとあらためて思いました。