百年前にアルゼンチンに渡った、明治生まれの歌人の生涯を追いかけた

新しい本を出しました。

石井衣子というひと

石井衣子は、大正時代に家族とともに日本からアルゼンチンに渡り、生涯のほとんどを地球の裏側で生きた女性です。

明治29年(1896年)に東京で生まれ、大正7年(1918年)、22歳の時に小さな娘二人を連れて、夫の待つブエノスアイレスへと海を渡りました。以来、何度かの一時帰国を挟みながらも、昭和35年(1960年)に64歳で亡くなるまで、彼女の人生の舞台は南米アルゼンチンにありました。

本書は、彼女が残した歌集『波にかたる』に収められた短歌と紀行文を中心に、生涯を通じて複数の雑誌に投稿された随筆の中から選び、一つにまとめたものです。

※本書に収録した作品は、著作権の保護期間を経て公開が可能な状態にあるため、ここに出版させていただきました。

『波にかたる』大正14年

大正14年(1925年)11月に竹柏会から出版された石井衣子の第一歌文集です。
大正7年に初めて日本を離れてから、大正14年の一時帰国までの、初期の航海や異国ブエノスアイレスでの生活の原点が詰まった一冊。

あらためて、短歌ってすごいなと感じました。
たった31文字で、読むひとに著者の見た景色を届けることができる。
日常のワンシーンを短歌という作品にとどめることができるって素敵な才能だなあと憧れます。

『五人の娘たち』昭和35年

『五人の娘たち』は、昭和35年(1960年)4月に衣子がブエノスアイレスで64年の生涯を閉じたのち、東京の竜星閣から出版された衣子の遺作エッセイ集。

長女の歌子が編者を務め、四女の佐藤みどりが装画やカットを描き、母が送り続けた手紙や残した日記を一冊に編み上げたものです。

国会図書館を活用

書籍以外に雑誌や新聞に寄稿した文章を国立国会図書館を利用して、パズルのピースのように衣子の作品を見つけては、ひとつひとつはめこんでいく編集作業は、心が躍るものでした。

旧仮名遣いで書かれた文章もはじめは読みづらかったのですが、慣れてしまえば苦もなく読めるようになります。

衣子の作品以外にも、実際にその時代を生きた人たちの残した記録はとてもおもしろく、ここ1年くらいは小説よりも古い記録を読みふけっています。

五女早苗の本も発見

五人の娘たちの末っ子早苗は生け花のお師匠さんとして活躍しましたが、衣子の文才を受け継ぎ、スペイン語で2冊の書籍を刊行、生け花や茶の湯など日本文化について紹介する文章を雑誌に寄稿もしていたようです。

Ofelia Sanae Ishiy De Tsuji – AbeBooks
Arreglo floral. Ikebana. by Ofelia Sanae Ishiy de Tsuji and a great selection of related books, art and collectibles ava...

早苗の嫁ぎ先はポルセラナ・ツヒ(Tsujiのjiはスペイン語ではヒと発音します)というアルゼンチンで今でも高い知名度を持つ磁器メーカーの経営者でした。1967年5月、当時の皇太子明仁親王と美智子妃が、日本の皇族として初めてアルゼンチンを訪問された際、このポルセラナ・ツヒにも立ち寄られています。

Porcelana TSUJI
Somos una empresa fabricante de vajilla de porcelana de capital netamente argentino, cuyos productos son mundialmente re...

といった感じで、衣子の作品群とそれに添えた私のつたない解説という構成で、夏休みの自由研究作品のような1冊ですが、秋の夜長に読んでいただけるとうれしいです。
10月いっぱいは半額セールとしております。

こちらにも衣子の文章を載せております。

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