「現代漢語大詞典」アプリで、中中辞典の使い方を考える



ソフトウェア ChineseWriter でおなじみの高電社さんから、中国語辞典のiPhoneアプリが発売されています。

他の辞書アプリとは一線を画す、赤と黄色がベースの派手なデザインが、中華っぽくて気に入りました。
検索ハブとも連携可能、前方・後方・部分一致など多彩な検索方法、こなれたUIになっています。

検索画面は赤、履歴は黄色です。

内容のコピーも可能です。

辞書の説明文の中に知らない語句があった場合も、タップして選択することでジャンプ検索が可能です。
ジャンプ検索でどんどん先へ進んでいっても、履歴を見ればもともと調べたかった語彙に戻れます。

各種WEBページへのリンクボタンも採用されています。引用されている例文に知らない語句や人名がたくさんあるので、中国語WIKIにとべるのは嬉しいです。Naver中国語辞書にとんで日本語の意味を確認しやすくなっているのにも、学習者への心遣いを感じます。

さて、中中辞典を使う理由、というか、おもしろさについて。

私はGoogleカレンダーに毎日日替わりで成語を登録しています。
(→関連記事「Googleカレンダーで、ボキャビル日めくりカレンダーを作る」

これを検索ハブ経由で辞書引きして、いろんな方向から眺めまわし、記憶にとどめようという魂胆です。
「如临大敌」の訳は、中日辞典だとあっさり「強大な敵に向かっているかのようだ:警備などがものものしいさま」と意味だけなのですが、これを「現代漢語大詞典」で引いてみると、

好像面对着强大的敌人。形容戒备森严。
萧殷《桃子又熟了…》:“二十个全副武装的哨兵,分成两排把守着城门洞,两溜刺刀闪着寒光,如临大敌。”

というように、意味の説明と共に、用例が古文や文学作品から引用され紹介されています。それも短文ではなく、ある程度のボリュームがある文章です。
動詞や形容詞の組み合わせ方も頭を悩ませますが、成語を使った文章をつくるのもかなり難しいです。読めばなるほど、とすんなり頭に入ってきますが、自分で作文するとなると、配置の問題もですし、まずニュアンスが正しいかどうかでしばらく悩んでしまいます。

そんなわけで、成語にも用例が紹介されているというのは大変嬉しいです。
この語句がたまたまそうなのかもしれませんが、中日辞典の日本語説明と、中中辞典の説明文がきれいに対応しているのも面白いですね。
「警備=戒备」「ものものしい=森严」と、芋づる式に語彙が増えていきます。

英語ではわりとしょっちゅう英英辞典を引いています。
私が好きなのは Collins Cobuild Advanced Learner’s English Dictionary です。

同じ語句を引き比べしてみるとよくわかるのですが、例えば「slip」という語の説明です。

【OALD】
to slide a short distance by accident so that you fall or nearly fall
She slipped over on the ice and broke her leg.
As I ran up the stairs, my foot slipped and I fell.

【Cobuild】
If you slip, you accidentally slide and lose your balance.
He had slipped on an icy pavement…
Be careful not to slip.

下のCobuildのほうが、上のOALDより、すべっちゃったイメージが浮かんできませんか?
他には、名詞で、skillet。

【OALD】
= frying pan

【Cobuild】
A skillet is a shallow iron pan which is used for frying

辞書の精がページから出てきて、一生懸命私に説明してくれているような気がしてきます。

こういうちょっとした違いですが、特色が出ていますよね。

中中辞典でもこういう違いがあるのかしら、と、簡単な語句でしばらく引き比べをしていたのですが、正直よくわかりませんでした。例文の集め方などにそれぞれの辞書の特徴があったりするのかもしれませんが、そこまでじっくりも見ておらず。

考えてみたら、学習初期の時代、それから企業内通訳・翻訳として仕事をしていた時代は、中中辞典は中日辞典に載っていない語句の意味を探すためのものだったなーと。

辞書を楽しみ始めたのは、仕事を離れて、キヤノンの電子辞書をよく使うようになった頃からでしょうか。

今回検索して参考にしたサイト一覧です。

中中辞典(現代中国語)案内
中中辞典あれこれ(PDF)
おすすめ資料 第6回中国の国語辞典(中中辞典)

英英辞典の使い方も含め、いろいろな説明を読みましたが、先生方、口を揃えて、「中中辞典/英英辞典は、知らない単語でなく知っている単語を調べたほうが勉強になる」とおっしゃってますね。

寄り道回り道でぷらんぷらんと歩き見たものの方が、案外役立ったりするのかもしれません。