映画「立春」

蒋文莉といえば、「大地の子」の陸一心の奥さん役で、日本でもかなり知られている中国の女優さんです。昨今「中国式離婚」などでホラーな妻を演じるなど、清楚で可憐なイメージとは程遠い役柄もこなしています。
そこに来たのがこの映画「立春」。
たまげました。確かに蒋文莉の面影はあるんだけど、どう見ても女優とは思えない、長距離ミニバスとかで本当に乗り込んできそうな庶民のおばさん。なんでもこの映画のために15キロの増量をしたそうです。この年齢ではお肉をつけるのは簡単ですが減量はとても大変でしょうに…すごい。プロです。他にも多分、入れ歯をして顔の感じを全然変えているし、お肌もぼろぼろです。冴えない容姿の、もう若くはないけれど夢を捨てきれずにいる、音楽教師の女が、小さな町でもがくさまを克明に描写しています。
このところドラマばかり見ていたので、この感じを忘れていました。「『映画』を見た~!」というこのしみじみとした後味。何度も見たくなる、というタイプの物語ではないけれど、深く心に刻み込まれて、主人公はあれからどうしているのだろう、と時々思い出してしまうような味わい深い映画です。
ネタバレになってしまうといけませんので、ここで一旦区切ります。


オペラ歌手になりたいという夢を捨てきれず、いつか北京に出て夢を叶えようと思っている、冴えない風貌の女。若い画家の卵に恋をするも、こっぴどく振られ、隣に住む若くて美しい女には強い劣等感を感じ続けていたり。何をやってもうまくいかないところに、やはり音楽の道を目指す余命わずかという少女がやってきて、彼女は援助の手を差し伸べるけれども、やはりここでも裏切られてしまう。踏んだり蹴ったり、見ていられないほど切ない展開です。
最後に彼女は施設に行って一人の少女を引き取り、音楽の夢を捨て、目の前の子供の未来のために自らを捧げます。
エンディング、天安門広場で楽しそうに、まるで本当の親子のように歌遊びをする二人。「立春」というタイトルの示すとおり、そこには春間近いあわあわとした白霞が立っていて、彼女の人生にようやく春の兆しらしきものが見えたことを暗示しているのだけれど、画面奥に目を向ける二人の後姿、私の目には猛烈に哀しく映りました。
「夢がなくっちゃ」とか言われるけれど、夢とか希望とかって、置かれている情況によっては、かえって人を生き難くさせてしまうんだよなあ、としみじみ思いました。
(Shiraさんやrororoさんの真似して)今日の一枚:
Once Around the World
Once Around the World It Bites
中学のときにハマっていました。今聴いてもいいです。最近再結成したようだけれど、そちらはまだ聴かず。どうなんだろう…

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